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政府が公表した令和5年の国内総生産(GDP)で、ドル換算した日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界4位に後退した。
急激な円安ドル高が日本のGDPを目減りさせたことや、ドイツの物価騰勢が日本以上だったことが名目値の逆転につながった面はある。
だが、平成22年に世界2位の座を中国に明け渡してから13年で、経済不振のドイツにもGDPが抜かれたことは、日本経済の趨勢(すうせい)的な停滞を裏付ける証左でもあろう。その現実から目をそらすわけにはいかない。
「失われた30年」を打開するには民間主導の力強い経済を取り戻す必要がある。現在の国内経済は、長期デフレから完全に脱却できるかどうかの岐路にある。企業の賃上げや構造改革で経済全体を底上げし、世界経済の牽引(けんいん)役としての役割を果たせるかどうかが問われよう。
令和5年の名目GDPは591兆4820億円だった。ドルベースでは4兆2106億ドルとなり、約4兆5千億ドルのドイツを下回る。日本は人口減に伴う国内経済の縮小も懸念され、いずれは人口大国のインドにも追い越されるとみられる。
日本がアジア唯一の先進7カ国(G7)メンバーとして国際社会で存在感を示してきた背景には国力の源泉たる経済規模の大きさがあった。日本は1人当たりGDPでも韓国などに迫られている。今後も国際的な影響力を発揮するには、経済力を一段と高めることが不可欠だ。
積年の課題である労働生産性の向上は製造業、非製造業を問わず進展させたい。デジタル技術を効果的に活用し、人手不足でも収益を上げる事業構造を築く。成長分野に十分な人材や資金が流れるよう労働・金融面での改革も徹底すべきだ。大切なのは、政府頼みではなく民間企業が自律的に前向きな経営を展開できるかどうかである。
2月15日に公表された昨年10~12月期の実質GDPは物価高に伴う消費不振などが響き2四半期連続のマイナスだった。足元では能登半島地震や中国経済の低迷などの懸念もある。
だが、昨年4~12月期の上場企業決算は過去最高益を更新する見通しだ。春闘での賃上げ機運も高まっている。こうした流れを経済の好循環へと確実につなげられるかが、日本経済の浮沈を大きく左右しよう。
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2024年2月16日付産経新聞【主張】を転載しています