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東京電力福島第1原子力発電所の処理水を海洋放出する計画について、その安全性の確認に来日していた国際原子力機関(IAEA)の調査団による検証作業が5日間の日程を終えた。
調査結果の報告書は4月中にまとめられる。
多核種除去設備(ALPS)で放射能を可能な限り取り除いた処理水に含まれるトリチウム(三重水素)などの放出濃度は安全基準を十分に下回る。生態系や人体へ影響が及ばないことを広く世界へ客観的に示す報告書となることを期待する。
トリチウムは自然界に分布し、原発の運転でも発生する。形は水分子の一部なので濾過(ろか)できない。こうした性質に加えてトリチウムの放射能は弱い上、生体に蓄積しないため、世界中の原子力施設から環境への基準値以下での放出が国際的に認められている。
にもかかわらず事故後11年が近づく今もトリチウムを含む処理水の海洋放出は行われていない。
主な原因は、かつては原発汚染水だったことから人々の心に生まれる忌避感だ。漁業者からは風評被害を警戒する声が上がり、放出への同意が得られないまま処理水の量は増え続けた。第1原発の敷地内には千基以上の大型タンクが立ち並び、廃炉工程の進行を妨げるまでになっている。
こうした状況を受けて政府は昨年4月、処理水海洋放出の方針を決めた。来春にも基準を十分に満たした処理水を海底トンネルで第1原発から1キロ沖の太平洋に放出する準備が進められている。
だが、中国と韓国は放出に反対しており、「核汚染水」とか「周辺国の安全と海洋環境に危険を招く」などと言いたい放題だ。陰湿な風評テロにほかならない。
そうしたこともあってIAEAの出番となった次第だが、来日した一行14人中8人は国際専門家という肩書で、中国と韓国のメンバーも含まれていた。
中国の外務省報道官は、IAEAの検証活動を支持するが、日本による放射能汚染水の海洋放出を認めるものでない。日本は放出の準備作業を止めるべきだとするコメントを発している。
4月のIAEA報告書で日本の計画が是認されても、中国は反対し続けるという宣言か。報告書には非科学、非道の振る舞いが世界の原子力の健全な活用の妨げになる旨も記述してもらいたい。
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2022年2月22日付産経新聞【主張】を転載しています
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