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世界最大の民主主義国インドは最近、英国を抜いて世界5位の経済大国になった。今、インドは人口で中国を抜き去ろうとしている。中国が世界一の人口大国でなくなるのは、少なくとも3世紀ぶりとなる。
インドの経済は中国より小さいが、成長が速い。世界銀行によると、インドは世界の主要国で最速の経済成長を遂げている。今後5年間にインドは全世界の成長の12.9%を占めると予測されており、これは米国の占める割合を凌駕する。
若者が成長の原動力
対照的に中国は、人口の減少と急速な高齢化、生産性向上の鈍化、高水準の政府債務など、長期的な制約にぶつかろうとしている。労働者の平均所得で測ると中国は依然として中所得の開発途上国だが、人口動態上の危機が深刻化している。
中国の人口動態上の危機は世界の工場としての地位を脅かすもので、1990年代に日本の好景気を失速させた同様の危機と比べることができよう。しかし、中国の平均家計所得は日本よりもずっと低く、高齢化する人口に中国がセーフティーネットを提供するのは難しいだろう。
こうした事情を背景に、中国の習近平国家主席は「中国の夢」すなわち中国の世界支配の達成を急いでいるように見える。世界秩序を中国に都合よく改変する戦略的機会がわずかにあると信ずる習氏は、イチかバチか賭けてみたいとの募る思いを示してきた。
しかし、インドは急ぐ必要がない。平均年齢28.4歳のインドは、世界でも有数の若い国家だ。インドの若者は急速な経済成長の原動力となり、消費ブームに貢献し、世界一流の情報経済の発展で明らかなように、イノベーションを推進した。
インドの人口は、44の国に分かれている欧州よりも約6億人多い。文化と民族の大きな多様性にもかかわらず、インドは初めから民主的制度を通じた近代化と繁栄に努めてきた最初の開発途上国である。そして中国と違い、インドは他人の土地と資源を欲しがっていると見られていないし、台頭してもごり押しをしない。
中国拡張主義を制御
一方、中国が直接的な戦闘よりも隠密、欺瞞、奇襲の手段で目的を達成しようとしてきたのには、軍事的な理由がある。例えば南シナ海での勢力拡張は、1発の弾丸も発射せずに行われた。全志願制のインド軍と対照的に、中国の人民解放軍(PLA)は18歳になって2年間の軍務に表向きは「志願」した徴募兵に多くを依存している。インドは山岳地帯でのハイブリッド戦の経験が世界一豊富で、米国での二つの研究によると、世間一般の見方とは逆に、標高の高いヒマラヤの環境ではインドが中国よりも優位に立つ。
インドの信じられないほどの経済成長は、インドを世界経済の重要な柱の一つにした。しかし、21世紀をインドの世紀にするには、インドは比較的安価な労働コストと、生産場所の中国からの緩やかな移転を図る西側企業の取り組みをうまく利用して、製造業の一大拠点とならなければならない。インドの加速する台頭は、中国拡張主義を制御するのに役立つ。
筆者:ブラーマ・チェラニー(インド政策研究センター教授)
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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1033回(2023年4月24日)を転載しています