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第75回インド共和国記念日を迎えるにあたり、日本の天皇皇后両陛下、日本政府そして日本国民の皆様に心からご挨拶申し上げます。また進歩を続ける印日特別戦略的グローバルパートナーシップの重要なステークホルダーである、インド国民の皆様、そして日本のインドの友人の皆様に敬意を表します。
本年のインド共和国記念日は、インドのナレンドラ・モディ首相閣下と当時の日本の安倍晋三元首相閣下が、印日関係を『特別戦略的グローバルパートナーシップ』に格上げしてからちょうど10年という節目の年にあたります。近年、この特別戦略的グローバルパートナーシップは、モディ首相閣下と岸田文雄日本国首相閣下のリーダーシップの下、ますます強化されています。
さて、昨年はインドと日本にとって共にG20とG7という重要な国際会議の議長国を務めた有意義な年でありました。大変多くのハイレベル会談が行われ、印日首脳も2023年3月の岸田首相の訪印時、5月の広島G7サミットでモディ首相の来日、岸田首相が訪印し出席した9月のG20ニューデリーサミットに合わせ、首脳会談を実施しました。また菅義偉元首相閣下も政財界のリーダーで構成された大規模ビジネス代表団を率い2023年7月にインドを訪問、モディ首相と面会されました。このような交流は、印日間の特別戦略的グローバルパートナーシップを再確認し、両国関係の可能性を最大限引き出すためのロードマップを設定する上で、極めて重要です。
インドは2023年、グローバルサウスの国々の展望や優先課題を共通のプラットフォームで共有すべく、グローバルサウスの声サミットを2回開催しました。またG20議長国として、『ヴァスダイヴァ・クトゥバカム』、すなわち、普遍的な同胞愛、を意味するマントラをG20期間中、またG20のテーマ、『ひとつの地球、ひとつの家族、ひとつの未来』を通じ、発信しました。G20議長国としてインドは各国の強みや経験を共有し、食糧や燃料、肥料、エネルギー、気候変動といった世界的課題に取り組み、世界全体に公平で正当な成長をもたらそうと努めました。このビジョンはアフリカ連合のG20への正式加盟、歴史的なG20ニューデリー首脳宣言という成果に結実しました。
複雑さを増す今日の地政学環境の中で、両国の深く多面的なパートナーシップの戦略的側面は、新たな重要性を帯びるようになってきており、これは2国間または多国間交流の頻度にも反映されるようになってきています。昨年7月には15回目となる外務大臣戦略対話が開催され、9月には統合幕僚協議の初会合が開催されました。2023年には、ヴィーア・ガーディアンやダルマ・ガーディアンといった合同軍事訓練も開催され、両国の防衛協力、両国軍の相互運用性を強化する上で極めて重要な役割を果たしています。
インドは、域内すべての国の安全保障と成長を目指すSAGAR原則、またインド首相が導入したインド太平洋イニシアチブ(IPOI)を通じ、自由で開放的かつ包括的なインド太平洋地域の実現を想見しています。2023年3月にインドを訪問した岸田首相閣下は、日本のインド太平洋地域のビジョンを訪印中に行った演説、「インド太平洋の未来~『自由で開かれたインド太平洋』のための日本の新たなプラン~“必要不可欠なパートナーであるインドと共に”」の中で詳らかにしました。クアッドメンバーとして、インドと日本は法の統治にコミットしており、現在の状況が変更されることなく、包括的なインド太平洋地域及び周辺地域に平和、安定、繁栄がもたらされるよう取り組んでいます。
日本はインドの経済変革における天為のパートナーです。両国は5年間で対印投資額5兆円を達成するという共通目標に向け関与を深めていますが、これは両国経済の成長を促し共に発展しようという両国の決意、そして地域に対する決意の顕れです。インドと日本には、印日包括的経済連携協定(CEPA)やサプライチェーン強靭化イニシアチブ、産業競争力パートナーシップ、印日デジタルパートナーシップ、クリーン・エネルギーパートナーシップ、半導体サプライチェーンパートナーシップといった既存プラットフォームを通じ、経済安全保障や成長に向け協力できる大きな可能性があります。日本は、ムンバイ・アーメダバード高速鉄道開発事業や、ムンバイ港湾間相互接続計画といったインドの旗艦インフラ事業の多くに関与するかけがいのないパートナーです。人材供給力のあるインドと人材需要の高い日本の間には相互補完性があり、両国経済の相互成長に貢献しています。
インドは気候変動問題にも揺るぎない決意をもって挑んでおり、2030年までに非化石燃料発電能力を500GWにまで拡大するという、野心的な目標を掲げています。国内でも再生可能エネルギー使用を促進しており、日本も参画する国際太陽光同盟(ISA)の設立を世界に呼びかけるなど、国内外で再生可能エネルギーの普及に取り組んでいます。インド国民一人当たりの温室化ガス排出量は世界平均を大幅に下回っていますが、国民一人一人に資源に配慮した暮らしを呼びかける、『環境のためのライフスタイル(LiFE)イニシアチブ』を展開しています。このような持続可能な生活スタイルは、インドと日本の伝統的な暮らしの一部でありました。インドは災害発生時に真っ先に人的支援・救助に向かう世界のファースト・レスポンダーになるという方針を掲げており、日本はインドが主導する災害強靭化インフラ連合(CDRI)の主要メンバーです。気候変動がもたらす課題がますます深刻化する中、CDRIの重要性は高まってきています。インドでは、世界的な食糧安全保障対策として、栄養が豊富で高い気候耐性を持ち、資源効率の良い伝統的な穀物、雑穀に注目、利用促進に取り組んでいます。
インドと日本は2023年を『印日観光促進年』と定め、両国間の人的交流の拡大、文化関係の強化に取り組みました。前年の成果を元に、2024年も『ヒマラヤと富士山をつなぐ』というテーマの下、『印日観光促進年2.0』として促進事業を継続します。また『印日科学イノベーション促進年』として事業を展開します。
インドは、著しい成長を遂げる巨大経済国として『アムリット・カール』または『黄金の25年間』と呼ばれる期間に入り、インドの独立から100年となる2047年までに急速な経済成長と繁栄を実現することを目指しています。日本はこれまでのインドの経済成長における大切なパートナーでした。今後も安心で安全かつ持続可能な世界において、印日関係が引き続き強化され、繁栄するであろうと確信しております。最後に長年にわたり日本とのダイナミックな関係の強化に貢献された活力あふれる在日インド邦人の皆様に感謝し、ご挨拶とさせていただきます。
筆者:シビ・ジョージ(駐日インド大使)