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アヌシー国際アニメーション映画祭(7月9~15日開催)の注目度が年々、高まっている。動員数は今回、延べ12万5千人と過去最高を記録し、併設の世界最大規模のアニメ国際見本市「MIFA」(ミファ)の展示スペースも近年、急拡大。世界中のアニメ関係者が訪れ、今や他の追随を許さない一大映画祭となっている。同映画祭に2009年から参加しているアニメジャーナリストの数土直志さんに話を聞いた。
同映画祭は以前、他のアニメ映画祭と同じように短編アニメやアニメ作家のための映画祭だった。しかし、12年にアーティスティック・ディレクターが交代してから、同映画祭の性格も変化したという。
「この10年間で本当に変わった。短編だけでなく長編、テレビ、さらにはハリウッド映画、『アニメ』と呼ばれる日本スタイルのもの、とすべてをそろえる総合アニメーション映画祭になった」
MIFAについては「以前は欧州のアニメ関係者ばかりだったが、いまは米ハリウッドのキーパーソンもアヌシーに来るようになり、インパクトが違う」とした上で、こう続ける。
「アニメを売る単なるマーケットではなく、トークイベントやシンポジウムなどアピールする場がたくさんあり、そこに人も集まってくる。MIFAは情報と商売のハブ(港)になっている」
一方、コンペティション長編部門に12本がノミネートされたが、その中にポール・グリモー賞(特別賞)を受賞した「窓ぎわのトットちゃん」(八鍬新之介監督)や「きみの色」(山田尚子監督)など合作を含め日本作品が4本も入った。
「世界的に今は長編アニメが潮流で、たくさん作られるようになったことが背景にある。今回、長編部門には100本以上のエントリーがあり、いずれも自信作のはず。その中で4本も日本作品が選ばれるというのは、本当にすごい」
また今回、長編以外にも多くの日本作品が出品されている。斬新な長編作品に焦点を当てたコントルシャン部門には11本がノミネートされ、その中に「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(古賀豪監督)が入った。
コンペ短編部門の「カワウソ」(泉原昭人監督)をはじめ、VR(仮想現実)部門、テレビ部門にも日本作品がノミネートされた。さらに今年新設されたコンペ以外で公式上映するアヌシー・プレゼンツ部門にも、「ルックバック」(押山清高監督)など日本作品が複数選ばれている。
「日本の『アニメ』スタイルが普通に受け入れられるようになった。『ルックバック』は反響が大きく、追加上映されたほど。アヌシーで追加上映は、ほとんど聞いたことがない。それだけ日本作品への関心も高いので、アヌシーに挑戦、参加する価値はある」
筆者:水沼啓子(産経新聞)
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■アヌシー国際アニメーション映画祭
1960年、カンヌ国際映画祭からアニメ部門を独立させる形で設立。毎年6月に仏東部の観光地、アヌシーで開催され、アニメーション映画祭として世界最大規模を誇る。