~~
沖縄県石垣市は1月29、30の両日、同市の尖閣諸島周辺で環境調査を行い、ドローンを使った上空からの調査を初めて実施した。尖閣諸島の魚釣島ではヤギの食害などによる自然破壊が懸念されており、市は今後、上空からの映像をもとに実態解明を急ぐ。調査船には東海大の海洋研究チームのほか、石垣市の中山義隆市長や市議らも乗船し、産経新聞記者も初めて同行取材した。
中山市長は31日、尖閣諸島周辺の環境調査について会見し、「(1年前の)前回調査より緑がさらに少なくなっていると感じた」と説明。上陸しての本格調査が必要であるとの認識を示した。
同市による調査は昨年に続き2回目。尖閣諸島周辺海域の環境保全などが目的で、初めてドローンによる上空調査も行われた。このほか周辺海域の水質などを調べるため、複数の地点で塩分濃度などのデータを収集した。同市は31日、上空からの映像などを一部公開した。
委託を受けて調査チームを率いた東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は「1年前より木々が減り、崩落が一層進んでいる状況が、上空調査でも明確になった。多くの漂着ゴミも確認された」と話した。
調査中、中国公船4隻が領海に侵入したが、海上保安庁の巡視船10隻が調査船をガードし、中国公船を寄せ付けなかった。
中山市長は「今回の調査で貴重な情報を得ることができた」と成果を強調した上で、海上保安庁の巡視船に謝意を示した。
■中国公船が領海侵入、接近
1月30日午前の調査の際、中国海警局の船4隻が日本の領海に侵入し、調査船に接近する動きをみせた。しかし、海上保安庁の巡視船10隻が調査船の前後左右をガードし、調査妨害を阻止するとともに、中国公船に領海外に出るよう警告した。中国公船と海上保安庁の巡視船が激しくせめぎ合う様子は調査船からも見てとれ、現場は一時緊迫した空気に包まれた。中国公船は、調査船が尖閣周辺から離れるのに合わせ、午後、相次いで領海外に出た。
「尖閣は日本領」
調査船の操舵(だ)室に設置してある無線から緊迫した声が流れてきたのは、30日午前3時5分だ。
「(中国公船の)海警1304(ひと・さん・まる・よん)、こちらは日本国海上保安庁巡視船である。貴船は日本の領海に侵入している。貴船の航行は無害通行とは認められない。日本の領海から直ちに退去せよ」
前日午後5時に石垣港を出港して10時間余り、石垣市がチャーターした調査船は尖閣諸島の魚釣島沖合約35マイル(約56キロ)を航行し、領海には達していなかったが、すでに中国公船が侵入して待ち構えていたのだ。
海保からの日本語と中国語での警告に、中国公船は直ちに反発した。
「こちらは中国海警船隊である。貴船の主張は受け入れられない。釣魚島(魚釣島の中国名)などは中国の領土である。周辺12カイリは中国の領海である」
すぐに海保が抗議する。
「尖閣諸島は日本の領土である。貴船の主張は受け入れられない」
こうしたやり取りが頻繁に繰り返された。
レーダーの船影
30日午前6時、調査船は魚釣島周辺の日本の領海内に入った。日の出前で外は真っ暗だが、中国公船が接近し、それを海保巡視船が阻んでいる様子は、調査船のレーダーにも鮮明に映し出されていた。
レーダーの中央に位置する調査船の左右と後方に、船影が3つ浮かんでいる。海保巡視船だ。少し離れた右側にも船影が2つある。これは中国公船だ。しかし別の船影2つがぴったりと張りついている。海保巡視船がスクラムを組み、中国公船を調査船に寄せ付けないでいるのだ。
海保巡視船の徹底的なガードは、夜明けとともにさらに明らかになった。
調査船の左右に2隻ずつ、後方に1隻の計5隻が一定間隔で航走し、魚釣島近くにも1~2隻が待機している。早朝から中国公船が姿をみせると、2隻で挟み込むように並走し、接近を防いだ。
毅然と対応を
今回の調査で最も懸念されたのは、ドローンを使った初の上空調査で、中国側が電波妨害などを発し、ドローンが落とされることだった。
だが、海保巡視船が中国公船を近くに寄せつけなかったこともあり、調査は無事成功した。
市から委託を受けた東海大研究チームのメンバーは「上空調査が成功した意義は大きい。映像を詳しく分析することで、新たな発見があるかもしれない」と期待を膨らませる。
ただ、尖閣諸島周辺で中国側が挑発行為をエスカレートさせているのも事実だ。
中国公船が尖閣周辺の接続水域で確認された日数は昨年、過去最多の336日に上った。
調査に同行した友寄永三石垣市議は「日本が毅然とした対応を示すことこそ、この問題にピリオドを打つ近道になるのではないか」と話している。
筆者:川瀬弘至(産経新聞)