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全国各地で営まれてきた「裸祭り」の伝統が、変化を迫られている。2月17日には岩手県奥州市の「黒石寺蘇民祭」が、担い手不足を理由に千年以上の歴史に幕を下ろした。一方で、ふんどし着用や女性の参加を認める神事も増えており、時代に合った形で存続を模索する動きも目立つ。
2月6日に今年の全日程を終えた三重県尾鷲市の奇祭「ヤーヤ祭り」。1日に初日を迎え、2日からは、男性たちが掛け声を上げながらぶつかり合う「練り」と、その後に海や川に飛び込んで身を清める儀式「垢離掻(こりか)き」が行われた。
垢離掻きは全裸が長年の慣習だったが、現場で撮影された画像がSNS(交流サイト)などを通じて拡散。昨年、地元警察から「犯罪の引き金になる可能性がある」などと指摘され、今年から水着やふんどし着用での参加を認めた。
氏子の代表者からなる総代会会長の仲敦司さん(80)は「水着の方が(川に飛び込む)スピードや勢いがあってよかったとの声もいただいている」と話す。
今年で最後となった蘇民祭も、五穀豊穣(ほうじょう)などを願い、護符の入った麻袋「蘇民袋」を奪い合う勇壮な祭りで知られる。かつては男性が全裸で参加していたが、撮影画像などが物議を醸し、平成19年以降は下帯着用に変更した経緯がある。
変化は各地に及ぶ。愛知県稲沢市の国府宮神社で、ふんどし姿の「裸男」たちが激しくもみ合う「国府宮(こうのみや)はだか祭」では、22日の関連神事に女性が参加。女性の参加は約1200年の歴史で初めてという。
同神社によると、女性は、厄除けの願いを込めた布で包んだ笹を担いで境内へ運ぶ「儺追笹(なおいざさ)奉納」を担い、さらしや法被に身を包む。
ここ数年は新型コロナウイルス禍もあり、男性が着衣で参加した年もあった。昨年には地元の女性団体からも参加の要望があり、神社側は安全面の確保など対応を検討。担当者によると、現時点で20~60代の女性約100人程度が参加する予定という。
筆者:中村翔樹(産経新聞)