ブルーのメッシュ・シートで覆われたベルリンの慰安婦像
(吉田賢司氏提供)
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2020年9月、ベルリンに本部を置く市民団体であるコリア協議会が、ドイツ初の「平和の像」を建立し公開した。この彫刻は、日本統治時代の慰安婦を象徴するもので、現在では最も物議をかもしている公共記念物の一つである。
銅像が設置されるやいなや、日本政府は直ちに憂慮を表明した。また、日本国民や市民団体は、銅像の一時的な許可を与えたベルリンのミッテ区に、数多くの反対書簡や嘆願書を迅速に送った。
2020年10月、茂木敏充外相が直接ドイツの外相に銅像撤去への支持を要請した。加藤勝信官房長官も、韓国との関係を前向きに再構築する必要があるとし、茂木外相の主張を再度強調した。
こうした抵抗に応じるかのように、ミッテ区の議会は当初1年間の仮展示許可を撤回し、銅像の撤去を要求した。
この命令はすぐさま、ドイツの韓国人コミューニティと韓国社会で大きな反発と抗議を引き起こした。こうした圧力に屈し、29人の区議員のうち24人が2021年9月28日まで平和の像を存置する決議案に賛成票を投じた。しかし、その期限が近づくと、当局は特別許可を与え、展示期間をさらに1年延長したのだ。
特別許可による延長も2022年9月28日に満了した。 だが、銅像は依然として同じ場所おいてあり、ミッテ区議会と市の芸術、文化、歴史課もこの問題に関する一切の言及をしていない。
ジャパンフォワードはより多くの情報を得るため、ベルリン区役所センターに連絡をしてみたところ、以下のような回答が届いた。
「『戦争のような紛争中、女性に対する性的暴力』という普遍的な内容が盛り込まれた記念碑が建てられるまで、いわゆる平和の像の展示を延長するよう区に要請した。現在、ベルリン上院と調整中であり、延長には上院の合意が必要となる。」
この返信から、現在ミッテ区にある平和の像に戦時中の性的暴力の犠牲者を追悼する、より一般的な内容の碑文が設けられる可能性があると推測できる。
同様に、ベルリン上院の判断により、こんご数年またはより長く銅像が展示される可能性があると思われる。延長期間や碑文のどの部分が削除されるかなど、詳細はまだ不明だ。
ベルリンのコリア協議会はジャパンフォワードとの電話インタビューで、「2022年5月に記念碑の展示延長要請書を提出したが、区議会からは返事がなかった。 区は新しい碑文をつくり、設置期間を延長する計画だと思うが、公式文書を提供していないため、詳細は分かりかねる」、と述べた。
29人で構成された区議会は、ベルリン市を管轄する上級機関であるベルリン上院の最終判断を待っているようだ。
それまで、数多くの論争を招いたこの「平和の像」は現在の場所に存置されると思われる。
筆者:吉田賢司(ジャーナリスト)