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岸田文雄首相は2月5日、官邸でイタリアのメローニ首相と会談し、6月にイタリア南部のプーリア州で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向けた連携を確認した。また、両首脳は日英伊3カ国による次期戦闘機の共同開発の推進でも一致し、3月に予定する外務・防衛当局間の協議で安全保障分野の協力をさらに加速させる方針だ。
会談は昨年、G7の議長を務めた岸田首相から今年の議長のメローニ氏への引き継ぎのために行った。首相は会談後の共同記者発表で、「今年のプーリアサミットの成功に向けて日本はイタリアへの協力を惜しまない」と全面的に協力する姿勢を示した。
会談後の夕食会では、覇権主義的な動きを強める中国や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮の動向、ロシアによるウクライナ侵略についての認識をすり合わせた。また、パレスチナ自治区ガザの人道状況の改善に向けて連携していくことでも一致。生成人工知能(AI)の国際ルールの枠組み「広島AIプロセス」を踏まえ、安全安心で信頼できるAIの実現に向け、G7が主導していくことを確認した。
次期戦闘機の共同開発については第三国輸出規制の緩和に公明党が慎重な態度を崩していない。首相は5日の衆院予算委員会で「与党で結論を得る時期として2月末を示している」と述べ、合意を急ぐ考えを示した。
対中認識を共有
岸田首相とメローニ氏はG7首脳の中でも波長が合うとされていたが、会談とその後の夕食会で個人的な信頼関係をさらに深めた形だ。
「メローニはすごい。40代で首相にまでなってしまうんだから」
首相は47歳のメローニ氏について周囲にたびたびこう語り、政治家としての力量を高く評価してきた。
個人的にも親密な関係を築いている。メローニ氏は外遊の際、幼い娘をできる限り同伴させるが、首相は昨年5月のG7広島サミットの際、まな娘へのプレゼントとして人気キャラクター・ハローキティのぬいぐるみを贈呈した。メローニ氏は首相の気遣いに感謝したという。
メローニ氏が党首として率いる「イタリアの同胞」は「極右」とも位置付けられ、2022(令和4)年の首相就任時は日本政府にも警戒感が広がった。
だが、メローニ氏は就任後、ロシアによるウクライナ侵略への対応で欧米に歩調を合わせるなど、協調外交を展開し、G7諸国などを安堵(あんど)させた経緯がある。
厳しい対中認識を共有できるパートナーである点も大きい。G7内にはマクロン仏大統領のように、対中関係に重きを置く首脳もいるのが実情だ。だが、メローニ氏はかつて首相に「中国と対峙(たいじ)することはG7の義務だ」とまで語ったという。G7で唯一参加していた一帯一路からの離脱も決め、中国から距離を置く姿勢を鮮明にしている。
中国が「祖国統一」を掲げて台湾への軍事的圧力を強める中、メローニ氏は首相就任前から台湾支持を明言し、欧州連合(EU)による対中圧力の強化を訴えてきた。日本の危機に直結する台湾海峡有事を防ぐ国際世論の形成のためにも、日伊の関係強化は重要な要素となる。
筆者:永原慎吾(産経新聞)