JETRO2024-1

JETRO held a press conference at its headquarters in Tokyo on March 21.(©JAPAN Forward by Hidemitsu Kaito)

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世界的な地政学的リスクが広がる中、日本は社会・経済の安定性があり、ビジネス環境に魅力がある。日本貿易振興機構(JETRO)が2023年秋に実施した国内の外資系企業調査の結果だ。

 

 

外資系企業のビジネス実態アンケート調査

 

JETROは日本国内に事業拠点を置く外資系企業7427社を対象に、日本におけるビジネスの実態・意識調査を実施し、その結果を発表した。調査期間は2023年10月から11月に実施し、1537社から有効回答を得た(回答率20.7%)。調査の目的は、日本のビジネス環境の魅力と課題、必要とされる支援について把握するため。同調査は2021年から続き3回目となる。

 

 

地政学的リスク、アフターコロナ等を踏まえた設問を新設

 

調査対象はJETRO支援企業から、国内外資系企業全般に広げて実施した。調査結果では、国内外資系企業の業績は2年連続で好調。新規拠点の設置・既存拠点の強化を考える企業の割合は共に2年前から約1.6倍と増加した。

 

東京は再開発でオフィスビルが立ち並ぶ(JAPAN Forward資料写真)

 

今回の調査では、地政学的なリスクを踏まえた設問も加えたが、社会・経済の安定性が日本でビジネスを行う上で良い環境だとの回答が引き続き顕著になっている。円安の傾向は、原材料を海外から輸入し、国内で販売する日本法人にとっては痛手とはなっているが、大規模工場など1度に大きな資本投資をする海外の親会社にとっては有利な条件になっている。

 

アフターコロナを踏まえた今後のビジネス展開で重要なテーマはDXであり、国内の法改正によるDX化の推進などで、国内でまだ遅れているビジネスでのDXサービスに商機が期待されている。

 

人材確保は引き続き重要な課題となっていて、外国人受け入れのための環境整備が求められている。

 

 

堅調な対日直接投資

 

対日直接投資残高(財務省調べ)によると、2000年の約6兆円から2023年の1次推計では49.6兆円と、8倍以上に増加している。2020年と21年はコロナ禍で40兆円程度に踏みとどまったが、22年から再び増加基調に転じている。日本政府は昨年春に、2030年までの対日投資額目標を従来の80兆円から100兆円に引き上げた。

 

回答企業の外国親会社の所在国・地域は、米国が20.9%で最多、次いでドイツ12.4%、中国9.6%となった。地域別では欧州が39.7%、アジア33.7%、北米が21.9%で、前回調査とほぼ同じ。

 

回答企業の8割強が関東地方に本社があり、製造業は75%が東京以外に比較的分散して拠点を持つ。親会社がアジアの6割以上が国内での事業拡大の意向があり、特に中国系企業が積極的。研究・開発や製造拠点では、立地にあたりインフラ、人材確保、コストなどを重視している傾向がある。東京圏では再開発が進み、オフィスビルの供給は潤沢である。

 

都心はオフィス供給が豊富(JAPAN Forward資料写真)

 

熊本県菊陽町には台湾の半導体大手が大規模工場を開所したことで、駐在員や家族の移住先を含め商業・サービス業などの経済活性化が見込まれる。製造業の地方進出では経済圏ができる。

 

TSMCの工場の周辺には、人材派遣や不動産関連などの看板広告がずらりと並ぶ=2月24日、熊本県菊陽町(千田恒弥撮影)

 

筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)

 

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