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居酒屋にも吞兵衛(のんべえ)にも朗報である。首都圏や大阪府で実施されてきた飲食店への営業時間の短縮要請が、10月25日から解除された。新型コロナウイルスの感染者の数が急速に減少したのに伴い、社会は通常の営みを取り戻しつつある。
とはいえ、まだ規制は残る。外国人の入国制限もその一つだ。たとえば留学生の場合、新規に入国が認められるのは、一部の国費留学生に限られる。つまり留学生のほとんどを占める私費の学生は、日本の大学に入学しても、自国に残ったままオンラインで授業を受けるしかない。
NHKのニュース番組が先月末、日本にあこがれるスペイン人女性の苦悩を伝えていた。現在22歳のジョアナ・グバウさんは子供の頃から、日本のアニメやアイドルに親しんできた。大学を卒業して、日本でファッションの仕事をする夢をかなえるべく、語学学校への入学を決める。ところが入国できないと告げられ、やむなく現在はソウルの大学で韓国語を学んでいる。
留学生の新規の入国を原則認めていないのは、先進7カ国(G7)のなかで日本だけだ。そのためグバウさんのように、留学先を日本から他国に振り替える事例が続出している。危機感を募らせた国立大学協会と日本私立大学連盟は、留学生の入国緩和を文部科学省などに要望している。ただし政府の反応は鈍いままだ。
世界からどのように見られているのか。日本人は外国人に比べて、ことさら気にする癖があるといわれる。先日亡くなった世界的なソプラノ歌手、エディタ・グルベローバさんの記事でも、「親日家」の一面が強調されていた。
このまま「鎖国」を続けていけば、グバウさんのような親日家の予備軍であっても、そっぽを向くようになるだろう。
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2021年10月22日付産経新聞【産経抄】を転載しています