Chinese police stations Akihabara

Streetview of Akihabara, where anime and manga devotees gather. Plenty of YouTube channels give a decent overview of Japan's tourist hotspots.

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このほど、ニューヨークのチャイナタウンで在米華人を監視するための「派出所」(警察署)を運営していた米国籍の中国秘密警官が2人逮捕された。喜ばしい知らせに拍手を送りながら、ここ数年、我が身に起きた様々なことが脳裏に蘇った。

 

 

本出版後に相次いだ嫌がらせ

 

中国出身で日本に帰化した私が中国から嫌がらせを受けるようになったきっかけは、全世界を襲ったパンデミックであった。新型コロナウイルスの発源地とされる中国・武漢のロックダウンが伝えられるや、映像もインターネットに流出した。防護服姿の一団が「上の指示」に従い、食料のない人や重病人を老幼に関係なく無理やり家に閉じ込める様子が映っていた。横暴な権力を前にして絶望に泣き叫ぶ人たちの姿にふと、幼少時に家族と共に政治的迫害を受けたかつての自分が重なった。

 

Chinese police stations
ニューヨークのチャイナタウンの在米華人を監視するための「派出所」があるとされる建物(ロイター)

 

庶民の人生がなぜ国の政治に翻弄されなければならないのか、という長年の疑問がまた頭に浮かんで、考えずにはいられなかった。そして、中国人の不幸はすべて共産党独裁体制に起因しているのではないかと思い至った。そんな私なりの考察を『我が敵「習近平」』(2020年6月、飛鳥新社)にまとめて出版した。

 

それからというもの、中国にいる家族が公安警察に呼ばれ、恐喝されたのは言うまでもない。やがて日本にいる私もひどい仕打ちを受けることになった。

 

「中国大使館に荷物が届いたので取りに来い」という訳の分からない呼び出しを皮切りに、番号非通知の「ワン切り」や無言電話などが頻繁にかかるようになった。携帯電話もパソコンも通信障害か何かでやたらにダウンする。予定の仕事が日本の出版社からキャンセルされたり、外出時に不審な車が付いてきたりすることもあった。また版元の出版社にも「中国大使館広報担当」と称する女性から糾弾する電話が何度もかかってくるといった、怪事件が相次いだ。

 

芥川賞作家・楊逸氏

 

知らぬ間に「民族の裏切り者」に

 

何よりショックだったのは、それまで政治の話をしたことのなかった知り合いが電話をかけてきて、開口一番、「何の証拠があってあんな本を書いたの」と咎めてきたことだ。「本を読んだの?」と聞けば、答えはノーだ。どうも本の出版後、この知人がメンバーになっている中国文化人グループ「在日華人××協会」が中華料理店に集まり、「楊逸批判大会」を開いたらしい。日本で中国批判の本を出版した私は、知らないうちに「国家転覆罪」を犯した「漢奸」(漢民族の裏切り者)に仕立て上げられたのだった。

 

今回世界的な問題となった中国の「派出所」は、日本にも東京の秋葉原と福岡の2か所あることが確認されたという。ならば日本政府にもすぐ動いてほしい。中国共産党の外国に対する得意技といえば、隙を見つけてはスパイを送り込む「浸透術」だ。とりわけ「経済」とか「文化」とかを冠した民間華人団体の中には、大声で「日中友好」を謳いながら、陰では日本の領土主権を侵害するような行為を働く組織も少なからず存在する。早急に対策を講じるように願いたい。

 

筆者:楊逸(芥川賞作家)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1035回(2023年5月1日)を転載しています

 

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