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ジャパンフォワード読者の皆さん、こんにちは。
私の住む日本では、多くの地域が梅雨のまっただ中にあります。梅雨とは東アジアにみられる雨季の一種で、曇り空や雨の日が1カ月間ほど続きます。私は雨も湿気もあまり好きではないので、正直、毎年この時期は憂鬱です。しかしながら梅雨は、日本にとって水を大地に蓄える大切な期間であり、暑い夏を迎えるための準備期間です。私も毎年、夏を心待ちにしながら、この時期を過ごしています。
さて今月は、5月7〜14日にカタールの首都ドーハで開かれた世界柔道選手権について報告したいと思います。
今大会、日本選手団は個人では男女合わせて5個の金メダルを獲得することができました。このうち女子は4個を獲得し、非常に良い結果を残すことができました。これにより来年のパリ五輪へ向け、ある程度のメドが立ったと考えています。
一方の男子は、金メダル獲得が1個に留まり、厳しい現実を突きつけられることとなりました。ただ、各選手の試合をひとつ一つ見ていくと、それぞれ課題がはっきりしており、試合内容も決して悪いものばかりではありませんでした。個々が課題をしっかりと把握し、克服に努めていけば、パリ五輪には十分に間に合うと考えています。
大会最終日には男女混合団体戦が行われ、日本は決勝でフランスに辛勝し、6連覇を達成しました。各選手がそれぞれの仕事を果たしたからこその結果でしたが、全体としては率直に言って厳しい試合の連続で、とくに決勝はどちらが勝ってもおかしくないような、ギリギリでの勝利だったと思います。
フランスは2021年東京五輪の男女混合団体戦チャンピオンです。当然、来年のオリンピックでは連覇を狙っているでしょう。地元開催ですからなおのこと力が入っているはずです。いずれにせよ日本にとっては難敵ですから、気を引き締めて強化を進めていく必要があると感じました。
魅力的な男女混合団体戦 女子の強化に乗り出す国が世界的に増加
その男女混合団体戦ですが、今大会は新時代の到来を感じせる結果となりました。
ジョージアがオリンピック、世界選手権を通じて男女混合団体戦で初めて3位に入り、メダルを獲得したのです。ジョージアは男子の強豪ですが、数年前から女子の強化に乗り出し、今回、見事に結果を出しました。
また、5位にモロッコ、7位にウズベキスタンが入り、柔道後進国と言われていた国が存在感を示しました。そのほか入賞こそしませんでしたが、個人戦では上位に入ることの少ないドミニカ共和国も非常に良い試合をしていて、強化が進んでいるこという印象を持ちました。
なぜこのように各国が男女混合団体戦に力を入れてきているかといえば、やはり、2021年東京五輪からオリンピック種目として採用されたということが大きいと思います。各国ともこの新たなメダル獲得のチャンスを逃すまいと強化を進めているのです。
選手の団体戦に対する意識の変化も感じます。
以前は個人戦に照準を絞っていた選手がほとんどだったと思いますが、今は、団体戦があることも想定したうえで準備を進める選手が増えてきた印象です。
また、女子が格闘技をすることへの抵抗感が弱まっている国が増えているのだと思います。その結果、女子の強化にも取り組みやすくなっているのでしょう。この傾向は今後、さらに進むのではないかと思います。
何より団体戦は観ていて面白い。男子、女子3人ずつ合計6人でチームを組んで戦う団体戦は、本戦が引き分けとなり、勝負の行方が代表決定戦に委ねられることも多く、観ていてスリリングなのです。ですから、柔道の試合はあまり観たことがないという人にもきっと、面白く観ていただける思います。
さて、日本ではパリ五輪に向けての代表選考が続いていきます。
皆さん、日本代表候補選手たちへのご声援をよろしくお願いいたします。
筆者:井上康生