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沖縄県の玉城デニー知事が9月18日、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で演説し、米軍基地が「(沖縄に)集中し、平和が脅かされている」と主張した。「日本政府は私たちの貴重な海域を埋め立て、新基地建設を強行している」と非難。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に対し反対を表明した。米軍基地は日米同盟の抑止力を形成する重要要素である中、知事がその配置に国際機関の場で異論を唱えるのは、日本国民の安全という国益を損ない、中国など外国勢力の不当介入を招く恐れがある。
玉城氏は18日、国連人権理の本会議場で開催された「国際秩序」の会議に出席した。演説で「沖縄は日本全体の国土面積の0・6%しかないが、日本にある米軍基地の70%がこの小さな島に集中している」と指摘。「米軍基地が集中し、平和や意思決定への平等な参加が脅かされている沖縄の状況を世界中から関心を持ってみてもらうために私はここにきた」と訴えた。
玉城氏は普天間飛行場の名護市辺野古への移設に関する平成31年(2019年)の県民投票に触れ「民主的に行われた県民投票で沖縄の有権者が明確に反対したにもかかわらず、埋め立て工事は進んでいる」と言及。「私たちは軍事力の増強が日本の周辺地域の緊張を高めることを恐れている」とし「沖縄県民の平和を希求する思いとは相いれない」との見方を示した。
「私たち沖縄県民は、2016年の国連総会で採択された『平和への権利』を私たちの地域において具体化するよう、関係政府による外交努力の強化を要請する」とも述べた。
一方、日本政府代表は玉城氏の演説に対し「沖縄における米軍の駐留は、地政学的な理由と日本の安全保障上の必要性に基づくもので差別的な意図に基づくものではない」と指摘。「辺野古への移設を着実に進めることが、普天間飛行場の完全返還を可能な限り速やかに実現し、地域住民の危険性の除去につながる唯一の解決策だ」と反論した。
沖縄県知事が国連人権理に出席し、発言するのは2回目。15年には翁長雄志前知事が辺野古移設反対を訴え「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」とスピーチした。国連の理事会に非政府組織(NGO)が意見表明する会議があり、関係者によると、玉城氏はNGOの発言枠を譲り受ける形で演説した。
辺野古移設をめぐっては、地盤改良工事の設計変更に関する上告審で、9月4日に県側が国に敗訴。玉城氏は設計変更を承認する義務を負ったが、態度を明らかにしていない。
筆者:板東和正(産経新聞ロンドン支局長)