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尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺などの排他的経済水域(EEZ)で中国が無許可の海洋調査を活発化させていることを踏まえ、海上保安庁が令和6年度以降、無人観測艇を搭載した大型測量船2隻を新造する方針を決めたことが1月21日、関係者への取材で分かった。東シナ海で海洋資源の開発権利が認められる大陸棚の延長を一方的に主張する中国に対し、海保は最新鋭の大型測量船で正当性の根拠となる科学的な調査データを収集し、地質分析を進める方針だ。
関係者によると、新造される大型測量船には、海底火山帯など危険な海域も自動航行できる無人観測艇「ASV」を搭載。ASVには水温や海流、塩分濃度などを測定する機器を装備する。海底近くまで潜航可能な自律型無人潜水機「AUV」など最新鋭の調査機器も搭載する予定という。
海保によると、中国の海洋調査船は、東シナ海の尖閣や沖縄トラフ周辺、国内最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)沖などで無許可の調査を繰り返している。
EEZや大陸棚では、沿岸国に海底の石油や天然ガスなどの資源を開発する権利がある。東シナ海では中国と韓国が2012年、地理的中間線を越える沖縄トラフ東側の日本の領海付近までを自国の大陸棚と主張。中国などの主張に反論するためにも、より精緻な海底地形データを収集、分析する必要があり、海保は、最新鋭の調査機器を搭載した大型測量船の整備が必要と判断した。
海洋権益確保に不可欠
「海底の地形や変動を正確に把握しておくためにも最新鋭の測量船を新造することは意義がある」。海洋政策に詳しい東海大の山田吉彦教授(海上安全保障)はこう強調する。
EEZと大陸棚は国連海洋法条約で規定。沿岸国には領海基線から200カイリ(約370キロ)までの海域、海底、海底下をEEZに設定することが認められ、この範囲の海底や海底下が大陸棚と呼ばれる。大陸棚は地質、地形の要件を満たせば延長でき、2国間の距離が400カイリ未満の場合は相手国との合意で境界を画定する必要がある。