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The bonnet bus parked in the precincts of the Shingu Kumano Shrine in Kitakata, Fukushima Prefecture. In the background is the shrine’s Nagatoko Hall of Worship, an Important Cultural Property of Japan. (©Sankei by Nobuo Serizawa)
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福島県喜多方市で、紅葉名所の新宮熊野(しんぐうくまの)神社とJR磐越西線・喜多方駅を結ぶボンネットバスが運行され注目を集めている。紅葉のライトアップに合わせた初めての試み。11月21日までの限定運行だが、普段は見られないレトロなバスと色付いたイチョウの競演を外国人観光客も楽しんだ。
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走っているのは「レトロバス昭和44年号」。名前の通り、54年前の昭和44年に新車登録された「いすゞTSD40」型で、同県会津若松市の広田タクシーが所有している。4輪駆動の珍しい車両で、ファンにはたまらない存在。最高時速は65キロ。普段はイベントなどで走らせているという。
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ボンネットバスは喜多方駅と新宮熊野神社間約6キロを15分ほどで走る。運行は1日4往復。このうち、同神社着が午後3時15分と同4時15分の2回は、国の重要文化財の拝殿「長床(ながとこ)」の前まで乗り入れる。
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背景には高さ約37メートル、樹齢850年以上とされる「長床の大イチョウ」も。黄色に染まった境内に古いバスが停車する風景には、タイムスリップしたような感覚を覚える。訪れた人たちは、さまざまな角度から熱心に撮影していた。
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「ガラガラガラ…」。乗り込んだボンネットバスの車内には、大きめのディーゼルエンジンのアイドリング音が響く。走り出すと、少しの段差でも下から突き上げられ、はねるような乗り心地だ。新潟市から友人と訪れた80歳の女性は「懐かしくて涙が出てくる。板張りの床がよかった。いい体験ができた」と喜んでいた。台湾から訪れた観光客も、独特な乗り心地を堪能していた。
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運転手の湯田敏伸さん(74)は「パワーステアリングがなくまっすぐ走らせるのも大変。その古さがいい」と笑い「車内では昔ながらの排気音を楽しんでほしい」と話していた。
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ボンネットバスの運行について、喜多方市では「秋の観光キャンペーンの一環として初めて行ったが、来年以降も走らせたい」(観光交流課)としている。