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Tonikaku Akarui Yasumura at an event for his photo book on December 3, 2015. (© Sankei)
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パンツ一枚の姿で全裸に見えるポーズをとる芸で人気を集めたお笑いタレント、とにかく明るい安村が6月4日(日本時間5日)、英国の人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント(BGT)」で日本人初の決勝進出を果たした。惜しくも優勝はならなかったが、なぜ安村の「裸芸」は英国でもウケたのか。そこには英国人の嗜好とともに、ある偶然も働いていた。
安村は、まず4月22日放送の番組に出演。おなじみの決めゼリフ「安心してください。はいてますよ」を「Don't worry, I'm wearing !」と英語で表現し、爆笑を誘った。その後、準決勝で敗れたが、ワイルドカード枠で決勝に進出。決勝では口ひげをつけてロックバンド、クイーンのボーカリスト、フレディー・マーキュリーになりきるなどし、喝采を浴びた。
神田外語グループ「ブリティッシュヒルズ」教育部マネジャーの英国人、レントン・トムさんによると、BGTは「優勝者が英国王室にパフォーマンスを披露できる伝統的な番組」という。それだけに「安村さんが決勝に出場したのはすごいことだ」と評価する。
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では、安村の芸が言葉と文化の違いを乗り越え、英国でも笑いを誘ったのはなぜだろうか。
「笑いの哲学」などの著書がある日本女子大国際文化学部の木村覚教授によると、相撲や公衆浴場が身近な日本とは違い、欧米では公の場で裸になることをタブー視する傾向が強い。一方で安村は登場時からパンツをはいているのを見せており「驚きとおかしさと安心、そして日本人というエキゾチックなものも含めて、ウケたのではないか」と分析する。
英国で修業した経験を持つスタンダップコメディアン、Meshidaさんによると、「Mr.ビーン」で知られる俳優ローワン・アトキンソンが人気を集めたように、もともと英国には身振りで笑いをとるノンバーバル(非言語)のコメディーも好きな人が多いという。
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また、安村がパフォーマンスを繰り返すうちに、安村の決めゼリフに観客が「Pants !」と応じるのがお決まりとなった。このやりとりについて「安村さんは『I'm wearing !』と言っていましたが、wearは他動詞なので、本来ならその後に何をはいているかを言う必要がある」と説明。結果的に安村が「僕がはいているのは?」と問いかけ、観客が「パンツ!」と答えるやりとりが自然発生的に生まれたという。
Meshidaさんは「英語ミスが掛け合いにつながったという素晴らしい例。日本人は安村さんのように、文法ミスなど気にせずに、ガンガン海外に行くべきですね」と語った。
筆者:本江希望(産経新聞)