Interview with PM Shinzo Abe on Coronavirus

Interview with Prime Minister Shinzo Abe on May 7, 2020

 

 

安倍晋三首相は5月7日、産経新聞の単独インタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言について、14日に行う感染者数の動向といった専門家の分析を踏まえ、一定の基準を満たせば31日の期限よりも前に都道府県ごとに段階的に解除する意向を示した。「14日の段階で解除になれば、どういう基準で解除したかを国民に丁寧に説明したい。14日に解除にならなくても31日は待たない」と述べた。

 

インタビューの詳細は以下の通り。

 

 

-新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言を全国で延長したのはなぜか

 

最低でも7割、極力8割、人との接触を削減するとの目標の下、欧米のように罰則があり、ロックダウン(都市封鎖)のようなものではないが、国民の皆さまには大変ご協力をいただいた。その成果が出てきており、間違いなく、われわれは収束に向かう道を着実に進んでいる。新規感染者の数を退院者の数が上回っていけば医療現場の負荷は減少していく。さらなる努力でそのレベルまで減らしたい。各地への感染拡大を防ぐためにも、地方への人の流れが生まれることを避けなければならない。

 

こうしたことから緊急事態宣言は全国を対象とし、5月31日まで延長することにした。有効な治療法やワクチンが開発されるまで、長期戦を覚悟する必要がある。『3密』を徹底的に避けながら、新しい生活様式を定着させ、新たな日常を国民の皆さまとともに作りあげていく。そして、次なる流行に備えて医療提供体制をしっかりと強化する。いわば、守りを固めるための1カ月にしたい。

 

-宣言解除に向けた指標を作るのか

 

可能だと判断すれば期間満了を待たずに解除する。そういう地域が出てくることを期待している。実効再生産数、医療提供体制、新たな感染者と退院者の数など、さまざまな状況を勘案しながらの判断となる。当然解除に向けた基準も速やかに検討し、実際に(専門家が分析を行う)14日の段階で解除できることになれば、どういう基準で解除したのかを国民の皆さまに丁寧に説明したい。14日の段階で解除にならなかった地域についても、その基準を満たしてくれば、31日を待たずに当然、解除になっていく。

 

-入国制限の解除は

 

全世界の累計感染者数が360万人を上回り、諸外国での感染拡大の状況が時々刻々と変化する中、それに応じてわが国は機動的な水際対策を講じてきた。欧米の新規感染者数は減少してきたが、その数は日本の新規感染者と比べてはるかに多い数だ。現時点では、世界全体の感染者の累計や増加傾向をみれば、収束に向けては予断を許さない。

 

 

◇日本の治療薬・ワクチン開発急ぐ

 

-治療薬の現状や検査体制の強化は

 

(新型コロナへウイルスへの効果が期待される新型インフルエンザ治療薬)『アビガン』は今月中の薬事承認を目指す。アビガンは海外でも高い評価をいただき、すでに40カ国以上で供与に向けて調整済みで、7日に各国に向けて輸送が開始された。

 

例えば、日本で長く使われてきた急性膵(すい)炎の治療薬『フサン』や気管支ぜんそく治療薬『オルベスコ』、ノーベル医学・生理学賞の大村智先生が開発に貢献した抗寄生虫薬『イベルメクチン』も効果があるとの報告を受けており、今、日本ブランドの薬が世界から求められている。感染症との闘いで決定的な要素を持つのが治療薬だと思うので、既存の薬はフル活用できるようにしたい。アビガンについては、今ある70万人分の備蓄を200万人分にまで増やす。そういう量産体制を強化している。

 

(新型コロナウイルスの)世界的な制圧のためにはワクチンが大切だ。東大などで開発が進められているし、国際的な開発、普及に向けては、(途上国へのワクチン普及を目指す国際組織である)「GAVI(アライアンス)」などにも資金を拠出している。ワクチンは通常1年近くかかるといわれている。早いもので秋ぐらいから人への治験が始まる可能性があると聞いている。(簡易な検査手法で実施できる)抗原検査は15分で結果が出るが、精度の問題があるのでPCR検査と併用し活用する。抗体検査は感染の全体像把握のために有意義なので、検査キットの精度評価などを踏まえて速やかに疫学調査を実施したい。

 

 

◇企業給付は「性善説」で入金

 

-企業などに最大200万円を給付する持続化給付金の支給が始まる

 

最もわれわれが重視したのはスピード感だ。今大変厳しい状況で、とにかく手元資金を、という切実な声が届いていた。この危機を皆で乗り切っていく、国民の一体感が大切だという観点から、国民の皆さまに一律10万円の給付をする。歯を食いしばって戦っていただいている小規模事業者や中小企業の皆さんをしっかり支援するため、全国で1千カ所を超える相談窓口を設けている。添付書類をできるだけ少なくしてオンライン申請を受け付ける。書類が少ない分、手続きも大変スムーズであり、(不正受給がない前提の)性善説で入金を進めていく。

 

 

◇中小企業支援に250億円超

 

8日の1日だけで少なくとも2万件以上、250億円以上の現金をお届けできる見込みだ。これまで個人への給付は行ったことがあるが、事業者への給付は今回が初めてだ。よくドイツと比較されるが、ドイツは従業員10人以下の小規模事業者が対象だ。支給額は最大180万円。日本の場合は最大200万円だ。実質無利子、無担保、元本返済最大5年据え置きの特別融資も窓口を強化し、1カ月余りで20万件、3兆円以上の融資を実行した。

 

-追加の経済対策は

 

家賃支援は自民党の岸田文雄政調会長のもとで検討してもらっている。その結果を精査してしっかり受け止めたい。雇用調整助成金についても『なかなか手続きが大変ではないか』という皆さんの声に応えなければならない。助成額の上限引き上げも検討したい。激甚災害の場合に適用される『みなし失業給付』なども早急に検討する。厳しい状況にあるアルバイト学生への支援も追加的な対策を速やかに取りまとめたい。中小企業とともに地域を支える柱である中堅企業への支援も考えていきたい。

 

-経済対策のうち政府の財政支出を示す「真水」が少ないという批判もある

 

真水の議論は支援を受ける人にとってどうなのかという議論とは別に、マクロ経済的にどうなのかという議論でもあると思う。大切なことは真水か、真水ではないかということではなく、必要としているところにしっかりとした手元資金や事業資金が届くのかということだ。

 

 

◇政府批判は「当然」

 

-政府への批判が多い

 

国内で500人以上の方々がお亡くなりになられ、心からお悔やみを申し上げたい。いろいろな我慢を強いられ、やりたいこともできない。経済上、仕事上、暮らしの不安もあると思う。その中で政府は何をやっているんだという気持ちになるのは当然だろう。模範解答があるわけではなく、批判や不満が出るのはやむをえない。国民の声として真摯(しんし)に受け止め、最善を尽くしたい。

 

同時に、ファクト(事実)に基づいて評価していただいている方々もおられるので大変ありがたい。欧米ではたくさんの人が亡くなり、われわれがことさらそうではないと申し上げるつもりはないが、国民の皆さまの大変なご協力によって、欧米に比べればはるかに(死者数などを)抑えることができたことは本当に感謝したい。こうしたことを成し遂げていることを国民の皆さまとともに静かな自信を持ちながら、さらなる努力を続けていきたい。

 

1月に中国経由の第1波が来た。世界に先駆けて中国湖北省からの入国制限に踏み切り、徹底したクラスター(感染者集団)対策によって中国経由の第1波の流行は押さえ込むことができたと推測されている。700人超の集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』は船内での個室管理など前例のない対応だったが、この船からのウイルスも収束したと分析されている。

 

他方、3月になって欧米経由の第2波がやってきて、連休の緩みも加わり、全国的な広がりをみせることになった。だから中国全土への入国禁止措置が日本は遅いのではないか、という指摘は全く当たらないことが明らかになったと思う。

 

 

◇改憲は必要性の問題

 

-緊急事態条項を設けるための憲法改正は

 

憲法改正に反対する人は常に『今はそういう時ではない』と言う。これは時の問題ではなくて、必要かどうかという問題だ。現行憲法は緊急時に対応する規定は参院の緊急集会しか存在していない。緊急事態において、国民の命や安全を守るために国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか。そしてこのことを憲法にどう位置付けていくか。国会議員は常に真剣にそのことを考え続ける責任と義務がある。緊急事態に対応していて国会議員の任期満了が来たときにどうするのか。憲法改正でしか対応できないところがある。

 

-感染症対策の態勢強化は

 

パンデミック(世界的大流行)対策は政府一丸となって対応しなければならない。組織強化を図っていくことは重要な視点だ。今回の対応を踏まえながら、危機管理態勢の強化という観点から不断の見直しを行いたい。

 

-拉致問題解決への決意は

 

先般、(拉致被害者の)有本恵子さんのお母さんの嘉代子さんがお亡くなりになられた。まだ私が父(安倍晋太郎元外相)の秘書をしていた時代に、うちの娘はどうやら北朝鮮に拉致されたようだとご夫婦でお見えになられ、本当に長いお付き合いをさせていただいている。(平成24年12月に)私が再び首相になった時に、これで私の娘と会えるかもしれないといわれていたので、その希望に応えられなかったのは本当に痛恨の極みだ。

 

条件をつけずに北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と直接向き合うという決意は今も変わりない。世界は新型コロナの対応に全力を尽くしているが、その中でもこの努力は続けている。さまざまなルートで、チャンスは絶対逃さないという決意であらゆる手立てをとる考えだ。当然、米国と緊密に連携し、チャンスがあれば果敢に行動していきたい。

 

-4日の政府対策本部で、首相から「任期満了」という発言があったが、衆院解散・総選挙については

 

国会議員がびっくりしているかな(笑)。それは全く考えていない。(新型コロナ対策に)全力を尽くしています。

 

聞き手:小川真由美、阿比留瑠比(産経新聞)

 

 

2020年5月8日付産経新聞の記事を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

INTERVIEW | Prime Minister Abe Anxious to lift State of Emergency, Talks About Advances in Coronavirus Treatment

INTERVIEW | Shinzo Abe on Economic Aid, Crisis Management in the Face of COVID-19

 

 

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