タイトルホルダー=6月2日、美浦トレセン(撮影・塩浦孝明)
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6月26日(日)に行われる宝塚記念(阪神芝・2200メートル)はGⅠ馬5頭が顔をそろえる豪華なグランプリレースとなる。今年の天皇賞(春)を制したタイトルホルダーはファン投票史上最多票を集めた。ファン投票2位のエフフォーリアは昨年GⅠを3勝し、JRA賞年度代表馬となっている。2020年の牝馬三冠、デアリングタクトは前走ヴィクトリアマイルで1年1カ月ぶりに故障から復帰、秋華賞以来の復活勝利がかかる。ポタジェは前走の大阪杯覇者。パンサラッサはドバイターフを逃げ切り海外GⅠを制した。フルゲート18頭で争われる。
JAPAN Forwardではタイトルホルダーに注目。「週間Gallop」の記事を紹介する。
「週刊Gallop」は、産経新聞社が「サンケイスポーツ特別版」として発行している競馬専門の週刊誌。1993年10月に創刊され、多くの日本の競馬ファンに愛されている。
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夢を背負い、夢へつなげたい。ファン投票1位に選ばれたタイトルホルダーが、海外への飛躍を期してサマーグランプリに臨む。
GⅠ2勝目を飾った前走の天皇賞・春(3200メートル)は圧巻だった。外枠⑯番から押して先手を取り、後続を離して逃げる。2周目1コーナー手前からペースを落としてタメをつくり、3コーナー手前でペースアップ。4コーナーにかけて後続が追われる中でも余裕の手応えで、直線で二枚腰を発揮して7馬身突き抜けた。「行けば折り合いは付くと思っていたし、いいリズムで走っていました。直線はカラ馬がいて心配な部分もあったけど、うまくジョッキーが対応してくれて、強い内容だったと思います」と栗田徹調教師も勝ちっぷりを評価。5馬身差Vを飾った菊花賞も含め、逃げて5戦5勝、類いまれな持久力を生かす先行策で長距離王の座を揺るぎないものとした。
中間は放牧を経て、1日に帰厩。「体も気持ちも、天皇賞に向けた帰厩時より上がっていると思います。前走時は負荷をかけながら気持ちも抑えながらという感じでしたが、今回は整える感じです」。トレーナーがさらなる上昇を強調する中、1週前の16日は函館滞在中の横山和生騎手が駆け付け、Wコースで単走。ある程度離れて僚馬を前後に配しながら6ハロン80秒9、ラスト1ハロン11秒9を馬なりでマークした。「競馬をイメージして、前に馬を置き、後ろのプレッシャーも感じながらどういうリズムで走れるか確認しました。よく我慢していたし、本当に安定しています。ジョッキーも『道中のタッチが前走時よりもすごくいい』と。時計的にも負荷がかかったと思います」と納得の調整過程を踏んでいる。
阪神コースは菊花賞(3000メートル)、天皇賞・春と2戦2勝だが、今回は距離短縮と同型の存在が鍵となる。中距離のカテゴリーを中心に歩んできたGⅠ3勝馬エフフォーリアには皐月賞(2着)、ダービー(6着)、有馬記念(5着)で後塵を拝しており「3回戦って3回負けていますし、どれだけ差を詰められるかですね」と挑戦者の思いは強い。ドバイターフを逃げ切ったパンサラッサには「一番まずいのは一緒に大逃げすることや、控えすぎてドスローになって瞬発力勝負になること」と警戒しつつ「そのへんはジョッキーがペースを見ながら流動的に乗ってくれると思います。決め込むことが一番良くないですから」と、あくまでマイペースの構えだ。
ファン投票1位の得票19万1394票は、1990年オグリキャップの15万2016票を上回り史上最多。「多くの人が応援してくれていることへの感謝の気持ちもありますし、責任もすごく感じています。最高の状態で送り出してあげないといけない。ただ、いつも通り馬に寄り添って調整していくことに変わりないです。今のいい状態を維持して、秋に向けていい結果を出してほしい」と栗田調教師は期待を込める。結果次第で、秋には凱旋門賞への挑戦が視野に入る。国内を制圧し、フランスへ――。新たな称号を手に、羽ばたく。
筆者:千葉智春(週刊Gallop)
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週刊Gallop(2022年6月20日)の記事を転載しています