北海道電力の泊原子力発電所。今年5月で運転停止から10年が経過した
=2012年11月(大竹直樹撮影)
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自民党の原子力規制特別委員会(鈴木淳司委員長)が原発をめぐる安全審査の効率化などを求める提言をまとめ、山口壮環境相と岸田文雄首相に提出した。
政府の原子力規制委員会による安全審査は長時間を費やしながら、国内で再稼働した原発は10基にとどまっている。このため特別委は、合格した原発の審査結果を他原発の審査にも活用するなど、審査に対する予見可能性を高めるように求めた。
ロシアによるウクライナ侵略に伴い、世界的にエネルギー価格が高騰し、日本でも電気・ガス代の上昇が続いている。こうした中で電力の安定供給と脱炭素につながる原発には、世界的に再評価の動きが広がっている。
岸田首相も原発審査の効率化に取り組む考えを示しており、提言の実現を規制委に働きかけて原発再稼働を主導してほしい。
行政における公正の確保や透明性の向上を目的とする行政手続法に基づき、規制委は原発の安全審査の標準処理期間を2年としている。だが実際の規制委の審査は断層評価などに多大な時間を要し、審査の終了が見通せない状況にある。北海道電力の泊原発の審査は9年に及んでいる。
自民党特別委は原発の再稼働に向けて審査の効率化を促すため、10項目の提言をまとめた。
鈴木委員長は「規制委の発足から10年がたつにもかかわらず、いまだに再稼働は10基しかないのが現実だ。規制委による審査は停滞しており危機感を強く持っている」と指摘している。
提言は、原発が立地する自治体や電力会社に審査状況を丁寧に説明するなどコミュニケーションの強化が必要と訴え、海外の原子力規制に関する知見を積極的に取り入れるよう規制委に促した。
東京電力福島第1原発事故を受けて発足した規制委は、政府から独立して原発の安全審査を担う組織だ。原発の安全性確保は欠かせないが、だからといって規制委は独善に陥ってはならない。行政機関として審査の効率化や透明性が問われるのは当然だ。
3月には東電と東北電力管内に初めて電力需給逼迫(ひっぱく)警報が発令され、大規模停電寸前に陥った。電力の安定供給と電気料金の引き下げにも資する原発の早期再稼働に向け、岸田首相は強い指導力を発揮すべきである。
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2022年5月18日付産経新聞【主張】を転載しています