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ラグビーで新たな世界規模の大会開催への動きが、英国メディアを中心に報じられている。
ワールドラグビーが準備を進めるのは、世界のトップ12か国・地域が参加するNations Championshipと仮称される大会。北半球の6カ国対抗諸国と南半球のラグビーチャンピオンシップを構成するニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンに加えて日本とフィジーが参戦するという。
大会は、12チームを2グループに分け、7月にそれぞれのチームが異なる半球の相手と3試合を行いグループ順位を確定し、各組上位2チームずつが11月に決勝トーナメントを行う案が検討されている。同時に、アメリカやサモアら上位12カ国に次ぐ12チームによる下部大会も実施される方針で、上下位リーグでの昇降格も行われる。上位大会は2026年に発足をめざすが、下位12か国の大会は24年に先行スタートする計画だ。
この構想自体は、2019年W杯日本大会終了後にも浮上したものだ。しかし当時は、ハイレベルの試合の増加によるトップ選手への負荷や、南太平洋諸国の扱いを軽視しているなどの理由で一部の国から理解を得られず、同時にコロナ感染の影響もあって昨年には白紙になっていた。
今回の構想の再浮上では、4年周期で開催されるW杯とブリティッシュ・アイリッシュライオンズの遠征と重複しない遇数年で隔年開催されることなどが新たに盛り込まれ、すでに一部の主要国の中でも合意形成がされている模様だ。
まだ報道レベルの段階のため、日本ラグビー協会(JRFU)では賛否などの正式表明はしていないが、「関係者の間で前向きな議論が継続的に進められており、当協会でも連携しながら方向性を注視している。数カ月のうちにワールドラグビーから新情報があると思われる」と高い関心を示している。
JRFUでは、最初に構想が浮上した時点で参入に前向きだった。日本代表の強化を考えると、現状の国際試合では不十分だからだ。日本代表はホスト国だった2019年W杯で初めてベスト8に食い込み、次回23年フランス大会では前回を越えるベスト4以上を目指している。そのためには、自分たちよりも実力が上の国と、より多くの真剣勝負を組むことが求められている。
だが、世界のトップ8クラスの国で、6カ国対抗のような強豪国と毎年複数の試合を組める大会に参加していないのは日本代表だけだ。歴代代表コーチもJRFUも、1試合でも多くのティア1国との対戦を組もうとマネジメントしてきた。もし新大会が実現すれば、アルゼンチンがラグビーチャンピオンシップに新規参入した2012年以降のW杯で、常にベスト8進出を狙える強豪に進化したように、日本代表の強化を飛躍的に押し進める期待がある。
5月12日には、今後の複数のW杯開催国が決まった。2027年はオーストラリア、31年は米国が初のホスト国になる。19年大会を成功裏に終えた日本も、JRFUが35年大会以降の2度目の開催を目指すことを明言しているが、その開催時には日本代表の優勝を目標に据えている。この壮大な夢を実現するためにも、Nations Championshipは日本にとっては重要なカギを握るトーナメントになる。
筆者:吉田宏(ラグビージャーナリスト)