新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」(奥)の発射実験に臨む
金正恩朝鮮労働党総書記(手前中央)
=3月24日、平壌(朝鮮中央通信=共同)
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北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した。今年に入り、巡航ミサイルの発射を含め19回目で、常軌を逸している。航空機や船舶の被害情報はないが、危険極まりない。
日本や世界の安全保障にとっても深刻な事態である。日本は国際社会と連携し北朝鮮による暴挙をやめさせなければならない。
浜田靖一防衛相は、ミサイルは最高高度約50キロで、通常軌道なら約400キロ飛翔(ひしょう)し北朝鮮東側の沿岸付近に落下したと説明した。変則軌道の可能性があるという。日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したとみられる。
韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が北西部平安北道泰川付近から日本海へ短距離弾道ミサイル1発を発射し、約600キロ飛行したとしている。韓国当局は北朝鮮による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射を警戒していたが、別のミサイルだったとみられる。
合同演習のため米原子力空母ロナルド・レーガンが韓国・釜山港に入港中だ。この動きに反発した可能性もあるが、そもそも北朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安保理決議違反で、許されない。
日本政府は北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に抗議したが、それで済ませてはいけない。非難や抗議だけしていても、日本国民の生命や安全は守れないからだ。
実際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は国際社会の非難に一切耳を貸してこなかった。それどころか、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射をちらつかせ、7回目の核実験を強行する恐れも指摘されている。最近になって核兵器の使用を法令化までしている。
弾道ミサイルがいつ何時、頭上を襲ってくるか分からない。日本はそんな危険にさらされているのだ。反撃能力の保有やミサイル防衛態勢の整備など、防衛力の強化を図らねばならない。
気を付けねばならないのは、北朝鮮の動きが中国やロシアを後ろ盾としていることだ。中露両国は今年5月の国連安保理で、北朝鮮への制裁強化の決議案を拒否権を行使して否決した。中露両国が問題行動を続ければ、北朝鮮はつけあがるばかりである。
日本は被害がなかったからといって、ミサイル発射に慣れてはいけない。北朝鮮の思うつぼだ。米韓など国際社会と連携し、北朝鮮への警戒を強めていくべきだ。
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2022年9月27日付産経新聞【主張】を転載しています