IOC

Olympic rings to celebrate the IOC official announcement that Paris won the 2024 Olympic bid are seen in front of the Eiffel Tower at the Trocadero square in Paris, France, September 16, 2017. (© REUTERS/Benoit Tessie)

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ウクライナから撤退の気配を見せぬロシアに対し、国際社会は圧力を緩めてはならず、スポーツ界も例外ではない。

 

特に国際オリンピック委員会(IOC)など訴求力を持つ組織には、世論をミスリードすることなく、強い態度でロシアに臨む責任がある。

 

IOC
2014年2月、ソチ冬季五輪開会式に出席したIOCのバッハ会長(左)とロシアのプーチン大統領(共同)

 

IOCはしかし、国際競技会から締め出されたロシアとベラルーシ両国の選手について、五輪復帰を検討すると表明した。パリ五輪出場の可能性もある。

 

常軌を逸した愚策で、全く支持できない。復帰の条件は、ロシア軍の撤退しかないからだ。

 

「いかなる選手もパスポート(国籍)を理由に大会参加が妨げられてはならない」とするIOCに対し、ウクライナのクレバ外相は選手ら罪のない人々が「パスポートのせいでロシアに殺され続けている」と言い、別の閣僚はロシア勢が復帰すれば「五輪をボイコットする」とまで訴えた。どちらが筋の通った主張かは明白だ。

 

中国や中東が主導するアジア・オリンピック評議会(OCA)も、アジア大会などでのロシア勢の受け入れを提案した。これも暴論だが、IOCは乗り気だ。

 

確かに、五輪憲章はいかなる差別も否定し、スポーツの政治的中立を掲げている。その一方で、五輪の目的について「人間の尊厳の保持」のためにスポーツを役立てることだともうたっている。

 

IOCの掲げる「政治的中立」の実相は、権威主義国家や巨大権益へのすり寄りだ。戦争犯罪への頰かむりと言ってもいい。まやかしの言辞でこれ以上、ウクライナと五輪を愚弄してはならない。

 

日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が「その方向で可能性を探ることは間違っていない」とIOCに理解を示し、国際体操連盟の渡辺守成会長が「選手の権利を守ることは国際統括団体としての責任」として、体操の国際大会に両国選手を出場させる考えを述べたのも論外だ。

 

スイス・ローザンヌのIOC本部

 

ロシア勢の「権利」は守る。ウクライナの人々が尊厳を奪われる現実には目をつぶる。そういう意味か。無神経にもほどがある。

 

五輪とスポーツで身を立てた人なら、プーチン政権を利するだけのIOCの愚策を諫(いさ)めるべきではないのか。このままではIOC委員でもある山下、渡辺両氏の言葉が、日本スポーツ界の総意と見られてしまう。実に迷惑だ。

 

 

2023年1月29日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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