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ロシアによるウクライナ侵略からまもなく1年になる。停戦への兆しはいまだ見えず、安全保障環境の激変や原材料価格の高騰など世界が混沌とする中で、建国記念の日を迎えた。
その重みを、ひしと感じずにはいられない。
ウクライナの戦闘は、国を愛し守ろうとする意志がいかに大切であるかを教えてくれた。寡兵のウクライナ軍と市民の懸命な戦いに世界は瞠目(どうもく)し、当初は及び腰だった支援が次々に寄せられた。
もしも将来、日本が同じ惨禍に見舞われたとき、同じような意志を示しうるだろうか。
国を愛するには、建国の物語を知らねばなるまい。日本書紀によれば辛酉(かのととり)の年(紀元前660年)の正月、初代天皇である神武天皇が大和の橿原宮で即位し、日本の国造りが始まった。現行暦の2月11日である。
以来日本は、貴族の世となり武士の世となっても、ただ一系の天皇をいただく国柄を守り続けてきた。19世紀に西洋列強がアジア諸地域を次々に植民地化するようになると、明治維新により天皇を中心に国民が結束する国家体制を築き、近代化を成し遂げた。
時の政府が2月11日を紀元節の祝日と定めたのは明治6年で、そこには、悠久の歴史をもつ国家の素晴らしさを再認識し、国民一丸となって危機を乗り切ろうとする意味があった。
終戦後、日本を占領した連合国軍総司令部(GHQ)により廃止されたが、昭和41年に建国記念の日として復活した経緯がある。
祝日法では「建国をしのび、国を愛する心を養う」日とされている。ウクライナ情勢だけでなく、台湾有事への懸念など東アジア情勢も厳しさを増す中、改めてその思いを深める必要があろう。
戦争を肯定するつもりは毛頭ない。むしろその逆だ。国を愛し守ろうとする意志を持つことが、他国に侵略の野望を抱かせない抑止力となる。
国の成り立ちを知り、先人がときに命懸けで築き、力を合わせ守ってきた歴史や文化に理解を深めることは、自分自身や家族、同胞を愛することにもつながる。同時に、他国の文化や歴史を尊重する心も育んでいく。
いまこそ、日本を美しいと思い、守ろうとする心を語り継ぐ意義は大きい。
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2023年2月11日付産経新聞【主張】を転載しています