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日本共産党による一党員の除名が波紋を広げている。除名されたのは党本部で安保外交部長を務めた松竹伸幸氏で「シン・日本共産党宣言」(文春新書)を著し、党首公選の実施などの党改革を訴えていた。
除名は同党が定める最も重い処分だが、理由について、志位和夫委員長は「異論をもっているから排除したわけではない」と述べた。
そのうえで「異論を党規約に基づく正式ルートで表明することを一切やらないまま突然、外から党の規約や綱領の根本的立場を攻撃した」と強調し、憲法21条に明記されている「結社の自由」に関する最高裁判例を引用して「党員は政党の存立及び組織の秩序維持のために自己の権利や自由に一定の制約を受ける」と正当化した。
共産党にとって「結社の自由」は、同じ憲法21条に明記されている「言論、出版の自由」よりも上位にある。「民主集中制」を組織原理とする共産党では、上級機関の決定が全てだ。一般党員は絶対服従を強いられ、「党首公選」などもってのほかなのである。
その証拠が、党員除名を論じた朝日、毎日両新聞の社説「国民遠ざける異論封じ」(朝日、8日付)「時代にそぐわぬ異論封じ」(毎日、10日付)に対する異様なまでの非難である。
志位氏が会見で「朝日新聞」を「産経新聞」と言い間違えたのはご愛嬌(あいきょう)としても、「『異論を許さぬ強権体質』と描いた朝日の社説はあまりにも不見識だ」「大手メディアがどこどこの党の運営は『非民主的』だとバンバンたたけば『結社の自由』は危うくされてしまう」と激しく批判した。
外部からの異論さえ許さぬ排他的な党体質が露(あら)わになったといえよう。いくら志位氏が「言論、出版、表現の自由を全面的に擁護する」と言おうと、共産党が政権を担った場合、「言論の自由」は同党が容認した範囲内でしか許されないと判断せざるを得ない。
現に、共産党独裁体制の中国でも、憲法35条に「表現の自由」が明記されている。
もうひとつ明確になったのは、現実的な安保政策への転換を求めた松竹氏を除名したことで、共産党の「日米安保廃棄」路線がより固定化されたことである。
それでも立憲民主党など野党が共産党と共闘するかどうかは、それこそ「結社の自由」である。
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2023年2月14日付産経新聞【主張】を転載しています