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国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)が戦争犯罪の容疑でロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した。
プーチン氏は、ロシアによる侵略を受けたウクライナから、多くの子供がロシアへ連れ去られていることに関与した責任があるとされた。
プーチン氏を実際の訴追手続きにかけることは極めて困難だが、戦争犯罪追及への重要な一歩であることは間違いない。国際社会はICCの捜査に全面協力し、戦争犯罪を決して許さないという姿勢で団結すべきである。
ICCは過去にも現職の国家元首に逮捕状を出したことがあるが、国連の中核である安全保障理事会の常任理事国の元首に対しては初めてだ。
常任理事国は国連内で重い責任と多大な権限を持つ。その国のトップが非道な犯罪の責任者と名指しされた事実は重い。
逮捕状発付は国家としてのロシアやプーチン氏の権威を失墜させるのに十分な効果を持つ。プーチン氏の国際社会での発言力低下やさらなる孤立は避けられまい。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「テロ国家のトップが公式に戦争犯罪の容疑者となった」として「歴史的」だと評価した。ロシアは「恥ずべき決定」と反発しているが、恥ずべき行為を重ねているのはロシアの方である。
ロシアがなすべきことは、ICCへの反発ではない。侵略行為の即時停止と子供たちを祖国に戻すことである。
英メディアによると、ICCは当初、プーチン氏に逮捕状を出したことを非公開にすることも検討していた。一転して公開に踏み切ったのは、これ以上の戦争犯罪を阻止するためだという。
ICCのカーン主任検察官は、少なくとも数百人の子供が孤児院などから連れ去られ、多くはロシア国籍を押し付けられて養子に出された疑いがあると発表した。
ICCには容疑者を逮捕する権限はなく、ICC加盟国内でしか管轄権を行使できない。ロシアは非加盟国である。ただし、プーチン氏が日本などの加盟国を訪問すれば逮捕される可能性があり、外交活動は制約される。
カーン氏は「どれだけ困難であろうとも法は最優先される」と述べた。プーチン氏は、いくら言い逃れしようとも、犯した罪からは逃れられないと知るべきだ。
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2023年3月19日付産経新聞【主張】を転載しています