~~
中国を訪問していたフランスのマクロン大統領が仏紙などのインタビューで、欧州は台湾問題で米中いずれにも追従すべきではないと語った。
インタビューは7日で、蔡英文台湾総統の米国訪問などに反発した中国が台湾周辺で軍事演習を始めた後の9日に報じられた。
先進7カ国(G7)の有力メンバーで国連安全保障理事会の常任理事国のフランス首脳が語った内容とは信じられない。
マクロン氏の発言は台湾海峡の平和と安定を追求し、台湾の自由と民主主義を守ろうとしている国際社会と台湾の人々の努力を妨げる。愚かな発言を反省し撤回してもらいたい。各国議員でつくる「列国議会連盟」(IPAC)などが批判したのはもっともだ。
中国は、台湾問題は内政事項だとして他国の台湾支援を阻もうと躍起だ。マクロン氏の発言は中国を勢いづかせ、台湾情勢を危ういものにしてしまう。
ロシアのウクライナ侵略と中国の台湾併吞(へいどん)には、専制主義勢力の「力による現状変更」という共通点があり、連動しているとわからないなら、マクロン氏には先進民主主義国のリーダーを務める資格があるのか疑わしい。
マクロン氏とともに訪中した欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、台湾問題をめぐって習近平中国国家主席と応酬となった。フォンデアライエン氏が正しい。
マクロン氏も出席した昨年のG7首脳会議(サミット)の声明は、台湾海峡の平和と安定の重要性を訴えた。G7外相声明も同様の立場を表明してきた。
また、フランスは「自由で開かれたインド太平洋」を重視してきたはずだ。仏軍は日本を訪問し、自衛隊などと共同訓練を行った。仏海軍の艦船が台湾海峡を通航したこともあるが、台湾の人々は勇気づけられたはずだ。マクロン氏は、これらを知らないのか。
マクロン氏訪中に際しては、仏航空大手エアバスが160機もの航空機を受注した。経済的利益優先で平和や自由、民主主義といった普遍的価値を軽視することは許されない。
岸田文雄首相は5月のG7広島サミットの議長だ。台湾はウクライナとともに最重要課題である。G7の足並みを乱すマクロン氏を翻意させなければならない。
◇
2023年4月13日付産経新聞【主張】を転載しています