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核開発とミサイル発射を続ける北朝鮮に対し、核使用を許さないとの警告を放ったといえる。
尹錫悦韓国大統領とバイデン米大統領が米ワシントンで会談した。両氏は米国の「核の傘」提供を軸とする拡大抑止を強化するワシントン宣言を発表した。
北朝鮮のご機嫌取りに終始して米国と距離を置いた文在寅前政権と異なり、尹氏は北朝鮮の脅威に現実的に対処しようと米国との協力強化に踏み切った。
米国もこれに応え、韓国防衛の決意を示した。米韓の連携は北朝鮮だけでなく、台湾への威圧を繰り返す中国への牽制(けんせい)にもなろう。同盟締結70年の節目に米韓関係が正常な軌道に戻ったことを歓迎したい。
宣言は、朝鮮半島有事を念頭に米国の核戦略計画に関する情報を韓国と共有する「核協議グループ(NCG)」の新設や、核兵器を搭載できる米戦略原子力潜水艦の韓国寄港を明記した。戦略原潜の韓国寄港は冷戦時代の1980年代前半以来となる。
NCGは、米国の核政策について、計画の立案や訓練などでの韓国側の関与も認める。
有事に拡大抑止が機能しないのではないかとの韓国側の懸念を払拭する狙いのほか、韓国内で出ている独自の核武装論を抑える目的もある。
ただし、加盟国に戦術核を配備する「核共有」(ニュークリアシェアリング)も扱う北大西洋条約機構(NATO)の核計画グループ(NPG)とは異なり、米国の核兵器が韓国に配備されることはないという。
バイデン氏は会見で北朝鮮が米国や同盟国を核攻撃すれば、「政権は終焉(しゅうえん)する」と言明したが、原潜の寄港だけで十分な抑止力となるかという問題は残っている。
同盟締結70年の共同声明は「日米韓3カ国協力の重要性」を明記した。さらに「台湾海峡の平和と安定の維持が、地域の安全と繁栄に不可欠」と指摘、中国を念頭に「一方的な現状変更の試みへの反対」も打ち出した。
松野博一官房長官は「3カ国協力は、地域や国際社会の平和と安定に一層重要だ」と述べた。それはよいとしても、尹政権が行動で示した核の脅威に対する危機感や問題意識を岸田文雄政権はどこまで持っているだろうか。岸田首相は尹氏を見習ったらどうか。
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2023年4月28日付産経新聞【主張】を転載しています