ispace

The ispace lunar exploration program HAKUTO-R is supported by Japan Airlines, Mitsui Sumitomo Insurance, and NGK Spark Plug. CEO Takeshi Hakamada of ispace (left) stands with the executives from the partnering companies on February 22, 2019 in Tokyo. (©Sankei by Ikue Mio)

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民間では世界初となる月面着陸を目指した宇宙ベンチャー「アイスペース」(東京)の挑戦は、失敗に終わった。

 

同社が開発した月着陸船は4月26日未明、月面に向け順調に降下していたが着陸直前に通信が途絶えた。月面に激突した可能性が高いという。

 

結果は残念だが、旧ソ連、米国、中国しか達成していない月面着陸という難関に、日本のベンチャー企業が挑んだ意義は大きい。今回の経験を次の挑戦に生かし、欧米に後れをとってきた宇宙ビジネスの分野で、世界の最前線に参入することを、大いに期待する。

 

ispace lunar lander
月着陸船から撮影された地球。Canadensys社のカメラで撮影(アイスペース社提供)

 

アイスペースは日本を拠点とするベンチャーだが、人材と技術を広く世界に求めた多国籍集団でもある。また、今回の挑戦を実現させるため、三井住友海上火災保険と共同で「月保険」を開発し、民間の挑戦を民間が支える仕組みを構築した。

 

こうした幅広い連携(ネットワーク)は、日本の産業全体、科学技術の研究開発にとっても、再生や活性化の起爆剤、原動力となり得るだろう。

 

袴田武史・最高経営責任者(CEO)は、「着陸直前までのデータを得られた。大きな一歩だ」と会見で語った。米スペースXの創業者、イーロン・マスク氏も大型宇宙船の打ち上げ失敗後に「多くを学んだ」とツイートした。

 

H3ロケット打ち上げ失敗後の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の会見が「おわび」から始まったのとは対照的である。

 

「果敢な挑戦と失敗」はベンチャーの特権ともいえる。それが失敗後の会見の対比に投影されているといえるだろう。

 

宇宙産業に限らず、科学技術分野の推進力は「挑戦と失敗」である。ベンチャー企業が、果敢な挑戦と失敗を存分にできるかどうかで、産業と科学技術の総合力は大きく左右される。

 

ベンチャーの力を生かしている国の筆頭が米国であり、日本はそのはるか後方に位置する。

 

アイスペースの挑戦と、そのために構築したネットワークは、こうした日本の現状を打破する突破口にもなり得る。

 

月面着陸失敗を受け、岸田文雄首相は「あくなき挑戦を応援する」とツイートした。ベンチャー企業の「果敢な挑戦」を幅広く支え、日本の再生につなげたい。

 

 

2023年4月28日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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