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岸田文雄首相(自民党総裁)は5月3日に憲法施行から76年となるのを前に産経新聞のインタビューに応じ、憲法改正の賛否を問う国民投票の早期実施に意欲を示した。自身が表明している令和6年9月までの総裁任期中の改憲実現について、「強い思いはいささかも変わりない」と強調。党の改憲4項目の1つである「教育環境の充実」の明記は、政権が進める次元の異なる少子化対策の「後押しになる」とも述べた。
首相はインタビューで、「現行憲法は時代の流れの中でそぐわない部分、不足する部分が生じている。先送りできない課題だ」と強調した。党が改憲4項目として掲げる9条への自衛隊明記▽緊急事態条項▽参院選「合区」解消▽教育環境の充実-について、「いずれも現代的な喫緊の課題だ」と説明した。
また、「できるだけ早く国民に選択してもらう機会を設けるために尽力しなければならない」と主張。国民投票の実施に向け、「(国会で発議に必要な)3分の2の合意を得るべく議論を深め、賛同する人を増やしていくことが重要だ」とも述べた。
首相は少子化対策を政権の最重要課題の1つと位置付ける。教育環境の充実に関し、「誰もが家庭の経済状況にかかわらず、質の高い教育を受ける機会を平等に与えられ、個性や能力を伸ばせるようにすることが重要だ」とし、「子供・子育て政策を進める上で憲法に盛り込むことは後押しになる」と語った。
さらに、ロシアのウクライナ侵略や中国による日本の排他的経済水域(EEZ)内への弾道ミサイルの発射などを挙げ、「こうした脅威を前に本当に国民の命や暮らしを守り抜けるのか。現状では不十分だという判断のもと防衛力の抜本的強化を決断した」と強調した。その上で「自衛隊の果たすべき役割はますます大きくなっている。憲法にしっかり位置付けることは極めて重要だ」と述べた。
今国会で日本維新の会と国民民主党などが緊急事態条項に関する条文案を公表した。首相は「建設的かつ真摯な議論をされている」と評価し、「発議に向け、野党と合意を得るべく議論を積極的に行っていく必要がある」と語った。
衆院解散・総選挙に踏み切り、改憲を争点にするかどうかを問われ、「先送りできない課題に一つ一つ答えを出すことに最優先で取り組みたい。今の時点で選挙は考えていない」と述べた。
首相は総裁の任期満了まで残り1年半を切った。次期総裁選で再選を目指すかについては、「(改憲議論の)進み具合を見ずに今から再選について申し上げることは適切ではない」と明言を避けた。インタビューは4月19日、首相官邸で行った。
筆者:大谷次郎(産経新聞編集局次長兼政治部長)
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