~~
政府は、熟練外国人労働者として永住可能な在留資格「特定技能2号」の対象業種を、これまでの2分野から11分野に拡大することを決めた。
外国人労働者に対し、幅広い分野で永住への道を開くことになる。国の在り方に関わる重大な問題である。専門性や技能を厳格に見極め、なし崩し的に受け入れを進めることがないように運用してもらいたい。
特定技能制度は、人口減や高齢化を背景にした人手不足への対応として、平成31年4月に始まった。一定の技能が求められる「1号」の在留期間が5年であるのに対し、熟練した技能が必要な「2号」は、在留期間の更新回数に上限がなく、家族の帯同が認められている。
これまで2号は建設、造船・舶用工業に限っていたが、経済界の要望を受け、すでに1号の対象となっている農業、漁業、宿泊など9分野を加えた。3月末時点で1号は約15万人、2号は11人だ。
世界的に人材の獲得競争が激しさを増す中、安い賃金や円安などの影響で、外国人労働者の「日本離れ」が指摘されている。
制度創設時に1号となった外国人労働者は来春以降、順次、5年の在留期限を迎える。1号の資格で来日している約15万人の相当数が、実務経験や試験を経て2号に移行することが予想される。
2号の対象業種拡大に伴い、外国人人口が急増する地域も出てこよう。
地域住民と摩擦が頻繁に生じ、社会が分断され、治安も悪化する不幸な事態は避けたい。外国人の孤立も防がなければならない。言葉や文化が異なる大勢の外国人が、急速に入ってきたことで、混乱を招いた欧州諸国の苦い例を忘れてはならない。
政府や自治体、企業などは、外国人が安定した生活を営めるよう、子供の学校教育や配偶者への日本語教育などを支援する態勢の整備を急ぐべきである。
外国人労働者を受け入れるというのは、単に労働力を受け入れるというだけでなく、地域社会でともに暮らしていく仲間を迎え入れるということにほかならない。
少子化に伴い働き手である生産年齢人口(15~64歳)は、今後も減少する。各企業などは外国人労働者だけに頼るのではなく、デジタル化を含む業務の効率化にも、怠らず取り組んでほしい。
◇
2023年6月27日付産経新聞【主張】を転載しています