~~
日本の象徴、富士山(標高3776メートル)の登山道で、8月11日から、異例ともいえる通行規制を行うことになった。新型コロナウイルスの規制が緩くなり、内外から登山客が殺到し、転倒や落石など危険な状態に直面していたからだ。
「噴火など自然災害以外で登山道を規制するなんて、前代未聞のこと。ただ、富士山は、規制しないと、危険なほど大混雑しています。事故が起きるまえに、登山者の数を絞ることにしたのでしょう」。登山ガイドは、こう話す。
富士山の登山道で、最も人気がある「富士吉田ルート」を抱える自治体・山梨県は、山の日で祝日となる11日から、登山者の規制を行うことを明らかにした。対象は、吉田ルートの5合目から上の区間で、期間は開山期の9月10日まで。登山道を巡回する安全誘導員らが、登山者が過密になり、転倒や落石の恐れがある場合、県に情報提供。県は県警に規制を要請し、県警が最終判断する。
「現場の警察官が登山者の通行を一時的に止めることになるのでしょう。1日あたりの登山者が4000人を超え、山頂が著しく混雑した場合、規制することになるようです。安全が確保された段階で規制を解くようですが、何もかも初めてのことでもあり、現場での混乱が予想されます」(山小屋関係者)
規制が余儀なくされたのは理由がある。すでに山頂付近の登山道に、登山客が殺到し、大渋滞が起き、落石や転倒のリスクが高まっていたからだ。
今年は、新型コロナウイルスが感染法上の5類になって初の夏山シーズンとなった。また、富士山の世界文化遺産登録10年の節目となるなど、登山者の増加が予想されていた。すでに山小屋の宿泊予約はほぼ一杯。「今シーズンの7月1日から30日までの吉田口からの登山者は、速報値で6万人を超え、新型コロナ感染拡大前の令和元年に比べ約17%増加しています」(関係者)。
こうした背景もあり、登山道の規制となったわけだが、混雑のほか、これまでも弾丸登山ヘのリスクが指摘されてきた。弾丸登山とは、夜間に5合目から登山を開始し、宿泊せず、ご来光を拝むため、一気に山頂を目差すこと。
「体力に自信のある若者や、来日の記念に日本一の富士山に登ってみようという外国人らが弾丸登山をするケースが多いですね。彼らは、軽装で登山靴ではなく、スニーカーで登っている人もいます。日本一の富士山は、3700メートルを超す高山で天候も急変しやすく、高山病や低体温症のリスクが高まります。弾丸登山のリスクが、山頂付近の混乱に拍車をかけそうです」(前出の登山ガイド)
11日からの連休は、お盆時期も重なっており、登山客が増えることも必至で規制となったわけかだが、台風の来襲も予想されており、週末の富士山周辺は緊迫の度を増しそうだ。