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来年1月にある台湾の総統選に出馬する与党、民主進歩党の頼清徳副総統は8月25日、台北市内で外国メディア関係者との懇談会に出席した。頼氏は対中政策に関して、「台湾の主権を犠牲にした形で北京と交渉しても、本当の平和を手にすることはできない。互いに尊重し、対等の立場であれば、いつでも交渉に応じる用意はある」と述べた。
頼氏はこれまで一貫して「(中台は)互いに隷属しない」と主張してきた。この日も改めて、台湾は中国の一部だとする「一つの中国」原則を否定した形だ。
その上で、頼氏は「これからは価値観外交を積極的に展開し、国際社会との連携をさらに強化していきたい」と強調した。
また、民進党の蔡英文政権の約7年間の外交政策を振り返り、「国際社会における台湾の存在感を高め、台湾を支持する仲間が増えた」と高く評価した。
さらに、自分が当選すれば「蔡氏の外交政策を継承し、民主主義、平和と繁栄を軸に、同じ価値観の国々との関係をさらに強化したい」と語った。
頼氏は対日関係を重視していることも強調した。経済や文化のみならず、安全保障分野でも、日本との対話を強化したいとの意向を示した。
岸田文雄政権が近年、防衛費増額をはじめとする安全保障政策に力を入れていることについて、頼氏は「他国の防衛政策を論評しないが、一般論として、地域の平和と安全に寄与する動きであれば歓迎する」と語った。
頼氏は、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が8月24日に始まったことを巡って、「周辺国が安心できるよう、日本政府は説明責任を果たすべきだ」と話した。
筆者:矢板明夫(産経新聞台北支局長)