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沖縄アリーナのスタンドで乱舞する無数の日の丸が、快挙を象徴した。バスケットボール男子の日本代表はワールドカップを5戦3勝でアジア最上位となり、来夏のパリ五輪出場権を獲得した。
一昨年の東京五輪は開催国枠での出場で、自力での出場はモントリオール五輪以来48年ぶりとなる。
3勝のうち2戦は最終盤の大逆転、1戦はからくも逃げ切った薄氷の勝利で、劇的な展開の連続に会場は大いに盛り上がった。勝利の殊勲は選手と指導陣のものだが、アリーナの客席を埋め、大歓声で鼓舞し続けた観客の後押しも大きかった。
バレーボールと世界の競技人口トップを競うバスケだが、体格がものをいう競技だけに、日本は苦戦を強いられてきた。
加えて男子では、長く国内にJBLとbjという2つのリーグが併存した。国際バスケットボール連盟(FIBA)から一本化を求められながら対立は続き、日本バスケットボール協会(JBA)は2014年、資格停止処分を受け、男女の代表も国際試合を禁じられた。
サッカー界からJBA会長として乗り込んだ川淵三郎氏が剛腕を発揮してBリーグでの一本化を果たし、15年に資格停止処分は解除された。
新生BリーグはJリーグの創設時にならい、参加条件に5000人以上収容の本拠地やユースチームの保有を求めた。これに応えて沖縄市はコザ運動公園に、8500人収容の沖縄アリーナを建設した。それが今回の決戦の舞台となった。
同アリーナを本拠地とする琉球ゴールデンキングスは5月、地元の熱狂的な応援を背に、bj出身チームとして初のBリーグ王者となった。いわば、バスケの試合を盛り上げることに最も長(た)けた県民が代表チームの熱戦を支えたことになる。
アリーナには、東京五輪の女子銀メダルに続いて男子の悲願を牽引(けんいん)したトム・ホーバス監督をねぎらう川淵氏や、バレーボール界から後任会長に就任した三屋裕子氏が歓喜の輪に加わる姿があった。こうしたスポーツ界総出の支援や歴史が生んだドラマでもある。
ただし、パリ五輪本番に地元の優位性はない。世界の強豪と伍(ご)する地力を、さらに高めなくてはならない。その成果が、今から楽しみだ。
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2023年9月5日付産経新聞【主張】を転載しています