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第2次岸田文雄再改造内閣が発足し、自民党の新執行部も決まった。政権が取り組むべき課題は山積している。岸田首相は指導力を発揮して取り組んでもらいたい。
自民党の麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長、松野博一官房長官、東京電力福島第1原発の処理水放出を担当する西村康稔経済産業相らを続投させた。これまでの政権の骨格を維持する布陣である。刷新感よりも安定性を重んじたためとみられる。
親族の疑惑が取り沙汰された木原誠二氏は首相の側近だったが、官房副長官から外した。党幹事長代理への起用で調整中だが、国民の理解が得られるかは不透明だ。
総合防衛体制の実現を
安全保障担当の閣僚は一新した。外相に上川陽子元法相を、防衛相に木原稔元首相補佐官を起用した。女性閣僚は従来の2人から過去最多に並ぶ5人とした。活躍を期待したい。
首相は13日の記者会見で「この内閣は変化を力にする内閣だ。経済、社会、外交・安全保障の3つを政策の柱として、強固な実行力を持った閣僚を起用した」と語った。物価高に対応する経済対策に最優先で取り組む方針だ。
首相はこれまで、防衛費の大幅増や反撃能力の保有を盛り込んだ国家安全保障戦略など安保3文書の決定や、安定電源である原発の再稼働推進、処理水の海洋放出など困難な課題に答えを出してきた。これからも難題から逃げずに、国民のために働いてほしい。
世界は「ポスト冷戦期」が終(しゅう)焉(えん)し、新しい時代に突入している。これを示すのが、ロシアによるウクライナへの侵略だ。
中国、ロシア、北朝鮮などの専制国家から、「法の支配」に基づく国際秩序が重大な挑戦を受けている。
日本は、自国の領土・領海・領空を守るだけでは国際的責任を果たすことにならない。欧米諸国やオーストラリア、韓国などと手を携えて、自由と民主主義、「法の支配」を守る責務がある。首相や閣僚には、その先頭に立ってもらいたい。
日本は今年、先進7カ国(G7)の議長国だ。ウクライナ支援を継続し、ロシアの野望をくじくため、国際社会をリードしなければならない。
覇権主義的な動きを止めない中国への対応は、政権が直面する難題だ。中国の習近平国家主席は台湾併(へい)吞(どん)を狙い、軍事的圧力を強めている。
「台湾有事は日本有事」という危機認識を常に持っておくべきなのは当然だ。日中の経済関係は緊密だが、尖閣諸島(沖縄県)や経済安全保障、日本産水産物の不当な禁輸などの問題で毅(き)然(ぜん)とした対処が必要だ。これは日本繁栄の大前提である。
防衛力の抜本的強化は、方針決定だけで満足してもらっては困る。反撃能力保有や弾薬など継戦能力の向上はもとより、サイバー安保や防衛上の研究開発を確実に進めてほしい。
皇位継承策まとめたい
有事の使用も想定した空港や港湾の整備や地下シェルターの建設などは防衛省自衛隊以外の省庁の役割だ。これらを含む総合的な防衛体制強化は首相が目を配らなくては進まない。
憲法改正も急がれる。首相は来年9月までの党総裁任期中の実現を目指す考えを示してきた。与野党が今秋に予定される臨時国会で憲法改正原案をまとめ、来年の通常国会で国会発議を行う必要がある。
本丸は第9条だ。「戦力の不保持」を定めた2項を削除し、軍の保持を認めるべきだが、前段階として、憲法への自衛隊明記も意義はある。国の大切な役割に防衛があることを明確にできるからだ。緊急事態条項創設も欠かせない。首相は自民党総裁として、憲法改正に積極的とはいえない与党公明党を翻意させなければならない。
安定的な皇位継承策の確立は国の根幹にかかわる。先送りは許されない。男系(父系)継承を貫いてきた皇統の歴史を守るべきだ。
すでに答えは出ている。政府の有識者会議が旧宮家の男系男子に皇族に復帰してもらう案を盛り込んだ報告書をまとめた。政府はこれを国会に提出済みだ。報告書実現へ指導力を発揮すべきなのは憲法改正問題と同じく、党総裁の岸田首相だ。
北朝鮮による日本人拉致問題も極めて重要だ。被害者と家族は高齢化している。時間との戦いなのである。
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2023年9月14日付産経新聞【主張】を転載しています