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沖縄県庁の地下駐車場から、有機フッ素化合物「PFOS(ピーフォス)」を含む消火剤が流出していた。発がん性など人体への影響が懸念される有害物質だが、県は3カ月近くも公表していなかった。
県は流出の原因究明と再発防止に努める必要がある。だが、問題はそれにとどまらない。
県はこれまで在沖米軍施設からのPFOS流出に対して繰り返し強く抗議してきた。令和3年のうるま市の米軍施設からの流出では、通報が1日遅れただけでも県は「危機管理の観点から不十分」と批判した。
今までの批判はなんだったのかとため息をつきたくなる。県庁からだろうが、米軍施設からだろうが、有害物質の流出はあってはならない。もし流出すれば直ちに除去などの対応をとる必要がある。
県の米軍と自身への対応に差がありすぎる。他者に対するのと同様に、県は自らを律すべきだった。その点の猛省も欠かせまい。
県によると、6月18日にスプリンクラーの誤作動で推計約900リットルの消火剤が県庁の地下駐車場に噴出し、湧き水を貯(た)めるタンク(湧水槽)に流れ込んだ。だが県はすぐには回収せず、9月12日の点検で外部へも流出したことを把握した。
9月19日の採水検査で、PFOSなどの有害物質が湧水槽から1リットル当たり2万4000ナノグラム、敷地内の排水溝から6600ナノグラム検出されたのである。
近くの久茂地川では34ナノグラムが検出された。国の指針値は50ナノグラムだが、もっと早く検査していれば数値がさらに大きかった可能性もある。
県は流出の事実を直ちに公表しなかったばかりか、その間も米軍施設のPFOS問題への批判は繰り返していた。
玉城デニー知事が担当部長から報告されたのは9月15日だった。玉城氏は適切な対応を指示したというが、事案の公表がなされないまま同月17日からスイス・ジュネーブへ飛び、国連人権理事会に出席した。玉城氏は米軍施設が環境を汚染していると訴えて回ったのである。
県自ら流出した有害物質について県民へ注意喚起するよりも海外での米軍批判を優先したことになる。玉城氏には環境と県民の健康を守る責任をきちんと果たしてもらいたい。
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2023年10月2日付産経新聞【主張】を転載しています