~~
説明責任が尽くされないまま臨時国会が閉幕した。極めて残念である。
その最たるものは、自民党の派閥による政治資金パーティーを巡る問題だ。各派閥や閣僚らは、捜査中であることなどを理由に事実関係を十分に説明することがなかった。
岸田文雄首相も早期に当事者に調査と公表を指示しなければならなかったにもかかわらず、手をこまねいてきた。
首相は国会閉会を受けた記者会見で「政治の信頼回復に向けて自民党の体質を一新すべく、先頭に立って闘う。これが自分の務めだと思い定めている」と述べた。その上で、当事者が自ら事実関係を調べて国民に説明しなければならないと語ったが、調査の期限も区切らず、具体性を伴わなかった。
首相は12月14日に人事を行い、安倍派の松野博一官房長官や西村康稔経済産業相らを交代させた。安倍派の閣僚らを外すことで、政権立て直しを図る狙いがあるのかもしれないが、実態の解明と国民への説明なくして、どうしてかなうだろうか。
問題は安倍派だけではない。二階派に加え、岸田派でもパーティー収入の一部が不記載だった疑いが浮上した。首相はこれまで裏金疑惑について「承知していない」と語っていた。12日に「修正すべき点があるなら適切に対応する」と記者団に述べたが、裏金の有無も含め、徹底した調査を求めたい。
国会では、松野氏への不信任決議案が与党の反対多数で否決された。違和感を覚える。更迭が既定路線だったことを踏まえれば、採決前に辞任させるべきだったのではないか。
説明が不十分だったのは政治資金の問題だけではない。
少子化対策の財源論では、社会保障分野における歳出改革の中身が具体的に明らかにならなかった。経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算は成立した一方、所得税・住民税の定額減税の意義や効果が説得力を持って伝わることはなかった。安全保障政策の議論も深まらず、憲法改正原案の作成にも着手しなかった。
内閣支持率は過去最低を更新中だ。首相は会見で「信なくば立たず」と語ったが、首相と自民の十分かつ速やかな説明なくして信頼は得られまい。
◇
2023年12月14日付産経新聞【主張】を、一部情報を更新して転載しています