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'Godzilla Minus One': The End of Pacifism

(『ゴジラ-1.0』:絶対平和主義の終焉)

 

 

岸田文雄首相が年の瀬に、かつてない苦境に立たされている。自民党最大派閥・安倍派の政治家たちが政治資金パーティーの収入を報告せず、「裏金」づくりにいそしんでいた疑惑が浮上し、激しい批判にさらされているためだ。

 

東京地検特捜部が安倍派関係先の強制捜査に乗り出せば、「裏金」づくりを主導した者に加えて、その手法や規模、使途、目的、さらには他の派閥の「裏金」を巡る状況なども、明らかになるだろう。

 

自民党総裁の岸田首相は12月13日の記者会見で、「国民の信頼回復に努める」と表明し、閣僚を交代させることで「政治とカネ」の問題に全力で当たる姿勢を示した。とはいえ、今後捜査が進むにつれて、首相の責任を問う声が高まることは避けられない。

 

1年半前には、60%以上あった岸田内閣の支持率は今や20%近くまで下落し、「何が起きてもおかしくない危険水域に入った」という評論家もいるほどだ。年末から新年にかけて、岸田首相にとっては、まさに自らの政治生命をかけた戦いが待ち受けている。

 

国外に目を転じると、世界はより悲惨で凄惨(せいさん)な戦争のニュースに占められている。ロシアによるウクライナ侵略戦争は来春、3年目に突入する。ロシアのプーチン氏の戦争は、欧米を巻き込み、長期化は避けられない情勢だ。

 

10月には、イスラム原理主義組織、ハマスが宿敵のイスラエルに大規模テロ攻撃を仕掛けた。それを契機に、イスラエルが開始したハマスとの戦争は、収束どころかエスカレートし、中東戦争へと拡大するのではないかと懸念されている。連日、戦闘員はもとより女性や子供を含む非常に多くの民間人が、これらの戦争の犠牲となっている。

 

パレスチナ自治区ガザで爆発した病院から別の病院に運ばれた負傷者ら=10月17日(ゲッティ=共同)

 

日本のお隣では、軍事力による台湾併合も視野に入れる中国や、弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮などの独裁国が、核戦力を含む軍事力を着々と増強している。

 

日本の和平への努力もむなしく、世界では対立と分断が深まる。核兵器を恫喝(どうかつ)の具として現状変更を要求するネオ帝国主義国家が台頭し、アジアで別の戦争が勃発すれば、世界は、大戦前夜と言っても過言ではない状況に陥る危険が高まっているのだ。

 

それでも英語ニュース・オピニオンサイト、JAPAN Forward(JF)がこの2週間に掲載した記事の中で最も読まれたのは、日本が生み出した怪獣映画、ゴジラの最新作についての批評だった。上の英文(日本語訳)は、その記事の見出しである。日本ウオッチャーとして知られる英国人投資アナリスト、ピーター・タスカ氏が執筆した。

 

タスカ氏は、これまで長年にわたり何度も制作されたゴジラ映画がその時代の日本社会を映し出す鏡であったと指摘。そのうえで、今回、「ゴジラは、人類が持つあらゆる破壊性を比喩的に示したものだ。破壊は常に人類とともにあり、決して消えてなくなることはない。日本はやっとこの現実を受け入れる用意ができたようだ」と記事を締めくくっていた。

 

映画「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督)のワンシーン(東宝提供)

 

日本は実際、核武装し、戦うことをやめないロシア、中国、北朝鮮という大中小3つの“ゴジラ”に取り囲まれている。日本は、その恐ろしい現実を直視し、対抗措置を急がなければ、ウクライナと同じく国家存亡の危機という事態に陥る危険がある。

 

岸田首相は、「裏金」問題というピンチをチャンスに転換できるのか、あるいは、そのまま沈没してしまうのか-。新年は、日本の未来を占う重要な年になるだろう。新年が日本、そして世界にとって多少なりとも明るい年となることを心より祈念したい。

 

筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)

 

 

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2023年12月18日付産経新聞【JAPAN Forward 日本を発信】を転載しています

 

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