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羽田空港の滑走路で日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突し、炎上する衝撃的な事故が起きた。新型コロナ禍の行動規制が緩和されて初めての正月休みだけに、ショックは大きい。
帰省客への影響を最小限に抑え、事故原因の迅速な究明を当局に望む。
日航機は新千歳空港から飛行し、着陸するところだった。乗客367人は全員が避難した。機体停止時にはすでに出火していたが、乗員の適切な誘導と、乗客の冷静な対応が避難を成功させた。海外メディアが「奇跡」「お手本のよう」と報じたが、見事な事故対応だった。
海保機は乗員6人のうち5人が死亡した。能登半島地震の被災地に支援物資を搬送するため、新潟航空基地に向かう途上の事故だった。殉職した乗員に哀悼の意を表したい。
運輸安全委員会や警視庁などが調査を進めている。管制と両機の交信の分析が焦点だ。両機の機長の認識はどうだったか。日航機側は「管制からの着陸許可を復唱した後、着陸操作をした」と同社の聞き取り調査に説明した。海保機側も「管制から離陸許可が出ていた」との認識を海保に示しているといい、認識が食い違っている。
日本の民間航空史上、滑走路で飛行機同士が衝突し、これほど激しく炎上・大破した事故は例がない。安全評価に関わる事故で、日本の航空管制能力に疑問符がつきかねない。徹底的に原因を究明し、再発防止策をとらなければいけない。
前日の元日には最大震度7の地震が能登半島を襲った。夜が明けた2日朝には頻発する余震と津波、火災によって壊滅的な被害を受けた現地の様子が伝わった。そこへ羽田空港の事故だ。元日、2日と連続した惨事に社会不安が広がっている。
非常時である。正しい情報の速やかな伝達が重要だ。政府はリーダーシップを発揮し、震災や事故の正確な情報を国民に提供するよう、関係当局・業界を指導すべきだ。被災者の救援と羽田空港の機能回復を急ぐ必要性は言うまでもない。
支援物資を運ぶ海保機の事故は痛ましいが、被災地支援にひるんではならない。木原稔防衛相は「二次被害に留意しながら、遅れのないよう支援活動を維持していきたい」と述べた。その通りである。
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2024年1月4日付産経新聞【主張】を転載しています