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事実であれば、言語道断であり、国連への信頼や国連の基盤である人道や中立性を破壊する行為である。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員が昨年10月のイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃に関与した疑惑が浮上した。
米英や日本などはUNRWAへの追加資金拠出を一時停止すると発表した。人道支援のための資金が、テロ行為に流用されるのは許されない。資金拠出の一時停止は当然だ。
国連はテロにかかわった職員の処罰に協力しなければならない。UNRWAの解体を含め、国連自身も改革に取り組むべきである。
米国務省によると、攻撃への関与を疑われたスタッフは12人で仕事内容は不明という。イスラエルが拘束したハマス戦闘員への尋問で明らかになった。国連は関与が疑われた職員との契約を解除し、事実関係の調査を始めた。
1949年に設立されたUNRWAは、パレスチナ自治区ガザやヨルダンなどに住むパレスチナ難民とその子孫に教育や医療などの支援を行っている。最大の拠出国は米国でバイデン政権は2021年以降、総額7億ドル以上を提供してきた。
グテレス国連事務総長は「愕然(がくぜん)としている」との声明を発表した。イスラエルと協力して早急に事実関係を把握し、公表しなければならない。
UNRWAでは、反イスラエル主義の教師が定期的に雇用されるなど、国連組織や職員に求められる中立性への疑問が以前から指摘されていた。国連監視団体のUNウオッチは昨年11月、UNRWAで働く教師らがハマスによるテロ攻撃を交流サイト(SNS)で「祝福した」と発信していたと報告、教師らの解雇を求めていた。
影響は中東地域にとどまらない。UNRWAのラザリーニ事務局長は、今回の疑惑について「国連の基本的な価値観を裏切る者は、世界中で私たちが奉仕する人々を裏切ることになる」と発言した。各地で働く国連職員らの安全に悪影響が及ぶようなことはあってはならない。
UNRWAを介さないパレスチナ難民への支援は続けられるべきだ。日本には、米国などと協力して独自の支援を届けてもらいたい。
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2024年1月30日付産経新聞【主張】を転載しています