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岸田文雄首相と来日したイタリアのメローニ首相が会談し、外交安全保障をはじめとする協力関係を深化させることで合意した。
イタリアは先進7カ国(G7)の一員で北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)の主要国だ。国内総生産(GDP)はEUで独仏に次ぐ3位の大国である。
イタリアがインド太平洋地域の安全保障への関心を高めていることを歓迎したい。今年は空母打撃群を初めて日本に寄港させ、自衛隊と共同訓練を行う予定だ。日本にとっては英国とともに次期戦闘機を共同開発する大切なパートナーといえる。
G7の今年の議長国はイタリアで、昨年の議長国は日本だった。メローニ氏は岸田首相に対し、「バトンを受け取り、優れた功績を残せるよう努力したい」と語った。両首脳はイタリアで開催予定のG7サミットに向け、緊密に協力していくことで一致した。
ウクライナ侵攻や中東ガザ危機で収束の兆しがみえず、11月には米大統領選を控えている。どれ一つとっても安保情勢の激変を招きかねない。米欧諸国の世論でウクライナへの「支援疲れ」が広がる中、G7各国の結束が試されている。
日伊の首脳がG7サミットに向け、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を発信したのは時宜(じぎ)にかなっている。
両首脳は、中東、ウクライナ情勢に加えて、北朝鮮の核・ミサイル、拉致問題や中国を含む東アジア情勢についても協議した。中国は台湾併吞(へいどん)を目指し軍事的圧力を強めている。意に沿わない行動をとる外国に貿易や投資の面で圧力をかけることをためらわない。
他国の主権や領土を侵害する中露両国や、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮のような国際ルールを無視する国を、価値観を共有するG7が抑止していかなければならない。
イタリアはG7で唯一、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加していたが、メローニ政権になって離脱を表明した。中国への厳しい安保認識を共有するイタリアが空母打撃群を日本に寄港させることは、強い抑止のメッセージになる。次期戦闘機の共同開発を含め、世界の平和と安定に資する日伊の外交安保協力を力強く進めたい。
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2024年2月11日付産経新聞【主張】を転載しています