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自動車業界の構図を変える新たな企業連合となるのだろうか。
国内自動車2位のホンダと3位の日産自動車が電気自動車(EV)分野で戦略提携の検討を始める覚書を結んだ。車載ソフトの開発やバッテリーなどEV基幹部品の共通化、共同調達を想定している。
国内外でしのぎを削ってきた両社が提携するに至った背景には、米国や中国の新興メーカーが価格競争力や開発スピードの速さでEV市場を席巻していることへの危機感がある。
提携によって開発スピードを速め、スケールメリットを生かして調達コストを削減する狙いだ。競争力を高め、世界のEV市場をリードする企業連合になることを期待したい。
日本メーカーはEVで大きく出遅れている。昨年のEV販売台数は日本勢最多の日産でも14万台弱にとどまる。世界首位の米テスラの180万台、2位の中国・比亜迪(BYD)の157万台に遠く及ばない。ホンダの三部敏宏社長は15日の会見で「従来の枠組みでは戦えない」と危機感を吐露した。
EVは補助金がなければまだ価格が高く、充電設備の整備の遅れもあって需要には減速感もみられる。独メルセデス・ベンツは2030年までに新車をすべてEVとする計画を撤回した。それでも自動車の脱炭素化に向け、EVが中核技術の一つであることは変わらない。
国内自動車産業は製造品出荷額が50兆円を超え、関連産業には約550万人が従事する。この基幹産業を守るには、日本メーカーがEVでも世界的な競争力を持つことが必要だ。
日本メーカーではトヨタ自動車が、資本参加するSUBARU(スバル)とEVを共同開発し、マツダとも車載システムの共通化を進めている。三菱自動車と連合を組む日産がホンダと提携することで、日本勢はEVでは2陣営に集約される。
急速にEVが普及している中国市場では地元メーカーに押され、日本勢が事業の縮小を迫られている。中国の自動車輸出台数は日本を抜き、昨年初めて世界首位にもなっている。
両陣営とも持てる技術を結集し、これまで以上の危機感を持ってEVの競争力強化を進めてほしい。日本経済を支えてきた自動車産業の衰退を招くようなことがあってはならない。
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2024年3月22日付産経新聞【主張】を転載しています