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折からの円安に拍車をかけるように、4月29日の外国為替市場で1ドル=160円台まで円が急落する場面があった。その後は一転して154円台まで円が急騰した。政府・日銀が為替介入を実施した可能性がある。
市場では5兆円を超える大規模な介入があったと推測されている。財務省は介入実施の有無を伏せており「覆面介入」だったとみられている。
この日は祝日のため東京市場は休場だった。海外市場はドルと円の取引が少なく、値動きは荒くなりやすい。そこを見越して円安を仕掛ける投機的な動きがあったのならば、厳正に対処すべきは当然である。
円安が行き過ぎれば、輸入物価上昇を通じて家計や企業の負担が増す。当局が過度の為替変動を許さぬ断固たる姿勢を貫くことは重要だ。投機への警戒をさらに強めてもらいたい。
日米の金融政策の違いを意識した円安ドル高が一段と加速したのは、25、26日の日銀金融政策決定会合の影響が大きい。植田和男総裁は会見で、円安進行は足元の物価上昇に「大きな影響を与えていない」などと発言した。このため市場では日銀の利上げ時期は遠いとの思惑が広がり、高金利のドルを買って円を売る動きを一段と強めた。
もとより利上げが注目されるのは円相場を動かすためではなく、経済や物価に及ぼす影響に対応するためだ。ただ、日銀の動向が市場の取引材料にされる現状を踏まえれば情報発信には細心の注意がいる。日銀はその点を改めて銘記すべきだ。
政府はかねて過度の円安には介入を辞さないという「口先介入」を続けてきたが、歯止めはかからなかった。今回、実際の行動に移したのであれば、これ以上の円安を許さないとの意思を明確に示す布石となる。
ただし、これをもって円安ドル高の趨勢(すうせい)的な流れを根本的に反転させるのは難しい。日銀が緩和的な金融環境を維持する一方、経済が堅調な米国はしばらく利下げをしそうにない。この構図が変わらない中では、介入効果も限定的だと認識しておくべきである。
5月1日の東京市場の円相場が157円台で推移するなど円安基調は続いている。同日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)なども踏まえて米国とも緊密に意思疎通を図りたい。
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2024年5月2日付産経新聞【主張】を転載しています