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インドで下院総選挙の開票が行われた。モディ首相率いるインド人民党は前回より議席を大きく減らし単独過半数を割ったが、与党連合は勝利した。
モディ氏は初代首相ネール以来となる連続3期目に入る。内政では経済格差の問題や少数派のイスラム教徒らとの融和に尽力する必要があろう。
新たな外交安全保障政策も展開すべき時にきている。
モディ政権下でインドは経済成長を遂げ、数年内に国内総生産(GDP)は世界第3位になる見通しだ。人口は中国を抜き世界一となった。核拡散防止条約(NPT)体制外ではあるが核保有国でもある。
インドは独立以来、非同盟中立を掲げ、今も世界の主要国に対し全方位外交を展開している。理念よりも実利を重視するしたたかさが目立つ。
だが、名実ともに世界の大国となったインドには、これまでの外交を改めてほしい。
モディ氏は開票後、「世界最大の民主主義の勝利だ」と語った。そう自負するなら、「世界最大の民主主義国」にふさわしい外交が望まれる。それは、自由や民主主義、法の支配に基づく国際秩序の守り手になることだ。そもそも、インドの目を見張る成長は、自由と民主主義に軸足を置いたからである。
インドは新興・途上国からなる「グローバルサウス」の盟主とも呼ばれる。新興・途上国の代弁者を務めるのは良いとしても、先進国といたずらに対立するのではなく、仲介者として振る舞ってほしい。
覇権主義的な中国の海洋進出の舞台であるインド太平洋地域において、インドは主要大国なのだという自覚も一層強めてもらいたい。自由で開かれたインド太平洋を目指す日米豪印の協力枠組み「クアッド」の一員として安保協力も積極的に進めるべきだ。インドの動向は世界安定のカギを握っている。
インドは、ウクライナ侵略を続けるロシアと友好関係を保ち、対露制裁から距離を置いている。だが、モディ氏は国際秩序を守るため、ロシアの侵略に断固反対を表明し、対露制裁に加わるべきだ。
日本は引き続き、自由で開かれたインド太平洋を守るため、インドと良好な経済、外交安保関係を構築したい。それは対中抑止力の増進にもつながる。
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2024年6月6日付産経新聞【主張】を転載しています