Meto the Northern Lake Farm Cat 008

Meto the Cat and Meisho Doto at the Northern Lake ranch. (©Sankei by Shuji Ozaki)

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巨大な馬に寄り添ってポーズを決める猫。彼の名は「メト」(推定5歳)。

 

引退した競走馬が暮らす牧場で、サラブレッドに劣らぬ存在感を見せつけている。

 

彼らの日常を発信するSNSなどで話題となっているのは、北海道新冠町にある引退馬の養老牧場「ノーザンレイク」。競馬ライターとして活躍し、現在は6頭の馬と暮らす佐々木祥恵さんがJRAの元厩務員・川越靖幸代表と2020年7月に開業した。5年ほど空き家だったため荒廃していた牧場の敷地の草刈りからのスタートだった。

 

引退馬牧場「ノーザンレイク」の看板猫メト。ほとんど人見知りをしない社交的な“好青年”だ =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

引っ越して3日目、どこからともなく現れたメトは最初からとても人懐こく、馬たちとの折り合いも問題なかったためすんなりと牧場の一員になったのだそう。

 

メトの相棒は認定NPO法人引退馬協会からの預託馬であるメイショウドトウ(28歳)。2001年の宝塚記念(GⅠ)をはじめ重賞5勝など27戦10勝と活躍、競馬ファンにはおなじみの名馬だ。

 

引退馬の養老牧場「ノーザンレイク」の看板猫メト。相棒のメイショウドトウとのコンビで大人気だ =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

SNSで「メトとドトウ」の仲睦まじい映像にひたすら癒やされていた記者だったが、昨年末の「ネコパンチを迎えます」という知らせには食いついた。「このコラボを撮らずして『肉球マニアカメラマン』を名乗り続けることは出来ない!」と取材に駆けつけたというわけだ。

 

1990年代に競馬担当だった事もあり、過分に染み付いたサラブレッドの神経質さに配慮して撮影に臨んだが、メイショウドトウとネコパンチはともに気さくに取材に応じてくれた。もちろん、佐々木さんのアテンドがあればこそ、だったが…。

 

引退馬牧場「ノーザンレイク」の看板猫メトを常に優しい眼差しで見守る佐々木祥恵さん =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

放牧エリアのパトロールに出たメトを尾行。ひとしきり馬たちとの交流を撮らせてもらった後にメトの様子をうかがうと、まるで「もういいかい?」といった表情を見せてから、厩舎へ引き返す。驚いた。なんとも賢い猫だ。

 

聞けば同牧場で稼働している芝刈り機の一台は、支援者が制作したメトの写真集の収益で購入したというから恐れ入る。

 

昨年(2023年)12月に引退馬牧場「ノーザンレイク」に入厩した元競走馬のネコパンチを警護するかのようにこちらを見つめるメト。看板猫が活躍する牧場にネコパンチが仲間入りするのには多くの縁があった =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

6頭の馬が皆、惚れ惚れするほど艶々に磨き上げられた馬体なのも印象的だった。川越さんが厩務員時代、英国遠征でパドックを歩く馬の手入れやしつけなどがよくなされているか、人馬が一体となった引き馬がなされているかなどを審査する「ベストターンドアウト賞」を受賞した事からも、馬と真摯に向き合い、大切に接しているのが強く伝わってくる。

 

引退馬の養老牧場「ノーザンレイク」の看板猫メト。相棒のメイショウドトウとのコンビで大人気だ =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

川越さんも佐々木さんも「まさか猫でこんなに注目を集める事になるなんて」と笑いつつ、「メトがいなかったら今のようにはなっていない」と感謝のコメント。共に暮らす仲間たちへの大きな愛こそが、好循環を作り出しているに違いない。

 

引退馬牧場「ノーザンレイク」の看板猫メト。馬たちの干し草の鮮度をチェック? =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

開業から4年。今もなお広大な敷地の整地、劣化した厩舎や柵の補修に追われる。引退馬のための支援や募金も十分とは言えないが、佐々木さんは前向きだ。「今考えているのは見学者が参加できるような体験型イベントとか… 詳細はまだ内緒で」と笑顔で語り、「会員制『ノーザンレイククラブ(仮称)』の会員向けサービスなども進行中です」と力強い。

 

丁寧な牧場運営には頭が下がる。今後も、2人と1匹と6頭を少しでも応援できるよう通い続けたい。

 

引退馬牧場「ノーザンレイク」の看板猫メト。馬たちの干し草の鮮度をチェック? =北海道新冠町(尾崎修二撮影)

 

筆者:尾崎修二(産経新聞写真報道局)

 

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