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Prime Minister Fumio Kishida speaking at the Council on Economic and Fiscal Policy. Prime Minister’s Office, June 4. (©Sankei by Ataru Haruna)

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6月11日、政府は今後の経済財政政策の方向性を定めるいわゆる「骨太の方針2024」の原案を公表した。今回の骨太の方針では、様々な社会的課題に取り組むことによってデフレ脱却を確実なものとし、国民が豊かさを実感できる社会の実現を目指している。とりわけ、財政再建の指標に注目が集まった。政府は今回、プライマリーバランス(PB=国債費を除く歳出を税収等で賄えているかどうかの指標。黒字の場合は賄えている)の黒字化を2025年度に達成する目標を据え置いた。

 

確かに経済活動が活性化する結果、税収が増加し、PBが黒字化することは望ましい。しかし、PBの黒字化は経済成長の結果として実現すべきものであり、景気が停滞している時にPBを黒字化するために歳出カット等でつじつまを合わせても、黒字は持続しない。まずは経済成長が最優先である。PB黒字化の目標時期は経済実態に応じて弾力的に設定すべきであり、今回の骨太の方針のように、カレンダーベースで決めてはいけない。

 

経済財政諮問会議で発言する岸田文雄首相(右から2人目)=6月21日午後、首相官邸(春名中撮影)

 

骨太方針が維持したPB黒字化目標

 

骨太の方針は基本理念として、以前から「経済あっての財政」をうたっているが、明確に「経済成長による財政再建を目指す」とすべきである。今回の方針は、当面の財政再建計画として、2025年度から30年度まで6年間の新たな「経済・財政新生計画」を策定し、その枠組みの中で、以前から存在した2025年度の「PB黒字化目標」を維持した。

 

また、歳出の費目ごとに事実上の上限を定める「歳出の目安」(実際上、予算査定の基準として機能している)については、それまでの3年間に続き、新計画当初の3年間(2025~27年度)においても目安実現の努力を継続する。ただし、「その具体的な内容については経済物価動向に配慮しつつ、予算編成過程で検討する」とされている。

 

2025年度のPB黒字化目標の達成は既に視野に入っているとされるが、それが真に実現するかどうかは、同年度の補正予算の規模などによって決まってくる。興味深いのは、2025~27年度について、「一定幅でのPBの黒字基調を維持していくことができれば…(財政の)持続可能性が確保できる」とされていることである。これは、PB黒字実現後、経済が安定していれば若干のPB黒字を維持できるという考え方に近い。

 

 

弾力条項は安倍氏の遺産

 

また、「歳出の目安」は実際の運用で大きな役割を果たしているにもかかわらず、骨太の方針では本文中でなく脚注で扱われており、バランスを失する。他方、歳出の目安等の財政制約により「重要政策の選択肢を狭めることがあってはならない」といった文言も入っている。これは、防衛費の大幅拡充のような大きな政策転換に対しても財政が柔軟に対応できるようにするための弾力条項である。骨太の方針を様々な事態に対応できる柔軟なものにしたいという故安倍晋三元首相の考えがここに生きている。

 

筆者:本田悦朗(国基研企画委員・元内閣官房参与)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1154回(2024年6月17日)を転載しています

 

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