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今年は「原子力の日」(10月26日)の制定から60年という節目の年だ。この記念日と呼応するかのように原発再稼働の新展開が始まろうとしている。
東北電力の女川原子力発電所2号機(宮城県、82・5万キロワット)と中国電力の島根原子力発電所2号機(松江市、82万キロワット)のことである。
いずれも、東京電力の福島第1原子力発電所と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)の原発だということに注目したい。
東日本大震災後、BWRの再稼働は初めてだ。これまでに再稼働した九州電力、関西電力、四国電力の計12基は全て加圧水型軽水炉(PWR)だった。
女川2号機は原子炉へウラン燃料をセットする装荷作業を既に終え、29日に原子炉を起動した。中国電は島根2号機への燃料装荷を28日に開始し、12月上旬の再稼働を目指す。ともに地域の電力安定供給に貢献する。
BWRでは、東電の柏崎刈羽原子力発電所7号機(新潟県、135・6万キロワット)も4月に燃料セットを終えていて、再稼働には花角英世・新潟県知事の同意を待つ日々が続いている。女川と島根の両原発の再稼働による牽引(けんいん)効果を期待したい。
「原子力の日」は、昭和39年7月に閣議で決まった。それに先立つ、国際原子力機関(IAEA)への日本の参加決定(31年)と、当時の日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)による国内初の原子力発電成功(38年)が、どちらも10月26日だったことによる記念日だ。
第二次世界大戦で核兵器の犠牲となった日本だからこそ原子力を、科学技術の力で平和目的に活用してみせようとの決意と自負がこめられていたことを思い出したい。そうした力強い記念日だったが、13年前の東電福島第1原発の事故を境に、日陰の存在に一変していた。
だが近年、世界では原子力発電の有用性が広く理解されている。新興国の経済成長に伴う電力需要増への対応と脱炭素化の両立を可能にするからだ。昨年の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では「原子力発電の推進」が成果文書に盛り込まれた。
エネルギーを巡る潮目の変化を読み誤ると日本は世界に後れを取る。「原子力の日」に、そのことへの思いを致したい。
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2024年10月27日付産経新聞【主張】を一部情報を更新して転載しています