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香港国家安全維持法違反で民主派が起訴された事件の公判を傍聴するため裁判所の前に並ぶ人と警戒する警察官=11月19日、香港(共同)

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香港の高度な自治を認めた「一国二制度」の「死」を追い打ちするような弾圧だ。

香港立法会(議会)選挙へ向けた予備選をめぐり、「政権転覆を共謀した」として、香港国家安全維持法(国安法)違反で民主派が起訴された裁判で、香港高等法院(高裁)は、45人に禁錮10年~4年2月の有罪判決を言い渡した。

45人は、民主派が立法会選挙に先駆けて実施した予備選を主導したり、出馬したりした。これらは正当な政治活動であるにもかかわらず、判決は国家政権転覆共謀罪にあたると決めつけ実刑を科すもので到底容認できない。

香港の裁判所周辺を警戒する警察官ら=5月30日(共同)

自由や民主を希求する香港市民に対する見せしめ効果も狙ったのだろう。1997年の返還から50年間は「一国二制度」によって強権支配から免れるはずだった香港は約束を反故(ほご)にされ、今や中国の一地方になってしまったともいえる。

香港は中国共産党政権の思うがままだ。国安法に関連する裁判は香港行政府が指名する裁判官が審理する。市民を守ってきた司法の独立はもはやない。

国安法の取り締まり対象は香港市民にとどまらない。香港民主派へ及んだ弾圧の魔の手は、日本人を含む外国人にまで及ぶ恐れもある。

林芳正官房長官は会見で「一国二制度への信頼を損なう事態が続き、今般の判決を含め重大な懸念を強めている」と語った。その上で、中国政府と香港当局に対し、香港市民の権利や自由を尊重するよう求めた。

米国務省は声明で「司法の独立を守り、政治的見解を平和的に表明する人を黙らせるための国安法の使用を止め、香港の活力と成功に重要だった開放性の回復を求める」と批判し、45人の無条件即時釈放を求めた。国安法を推進した香港当局者のビザを制限する制裁も科した。

英外務省も「(国安法が)香港の人々の権利と自由を侵食している」と非難した。

中国外務省は各国の批判に「内政干渉」と反発し「香港の法制度を中傷、破壊することに断固反対する」としている。だが、香港を破壊しているのは中国共産党政権が主導した国安法のほうである。沈黙を強いられる香港の人々に代わって、日本や国際社会は弾圧の撤回を求め続けていくべきだ。

2024年11月21日付産経新聞【主張】を転載しています

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