Russia Vladimir Putin

モスクワでロシア国防省幹部らと会合を開いたプーチン大統領(左)=11月22日(タス=共同)

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ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が核兵器使用の脅しを強めている。

露軍が21日のウクライナ攻撃に用いたミサイルについて、プーチン氏は開発中の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」と明かした。露領内の発射地から約900キロ飛び、最大速度はマッハ11で6つの弾頭を搭載していた。非核弾頭による攻撃だったが、核弾頭を搭載できる。

「オレシュニク」による攻撃は、日本を含む世界に向けた核威嚇でもある。いかなる意味でも容認できない。

An image released by the Ukrainian Air Force in August purportedly showing an attack on a Russian command post in the Kursk region of western Russia using U.S.-made weapons (provided by the Ukrainian Air Force via Reuters/Kyodo)

プーチン氏は「実験は成功した」と述べ、ウクライナが米供与の地対地ミサイル「ATACMS」などで露領内を攻撃したことへの報復とした。

だが、米政府がこれまで認めなかったATACMSの露領攻撃への使用を許したのは、ロシアによる北朝鮮兵の参戦受け入れという暴挙があったことが大きい。戦闘激化の責任はひとえにロシア側にある。

「オレシュニク」は、ソ連が1970年代半ばから配備した中距離弾道ミサイル「SS20」の脅威を想起させる。ソ連は、自国領から欧州は射程内となるが米国には届かない核ミサイルを配備し、同盟関係にある米欧の分断を狙った。欧州諸国は、米国の核の傘が効かなくなると深刻な懸念を持った。SS20は極東ソ連にも配備された。

北朝鮮のKN23と断定されたミサイルの残骸=1月11日、ウクライナ・キーウ(共同)

「オレシュニク」による威嚇は米欧への露骨な脅しだが、その矛先は日本や中国にも向かい得る。リャプコフ露外務次官は25日、米露の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効しているため「オレシュニク」の配備に「何の制限もない」と語った。中・短距離ミサイルのアジア太平洋地域への配備の可能性を排除しないと強調した。

これに先立ち、プーチン氏は19日、核兵器の使用指針を改定する大統領令に署名した。これまでも通常兵器による対露攻撃に核兵器で反撃する場合があるとしていたが、今回の改定で無人機(ドローン)や巡航ミサイルなどが大規模に発射される場合も使用があり得るとした。また、核保有国の支援を受ける非核保有国へも核兵器を使用できることにした。

なりふり構わぬ核威嚇だが窮地にあるロシアが展望を描けないでいる証左でもある。ウクライナ支援は引き続き重要だ。

2024年11月27日付産経新聞【主張】を転載しています

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