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伝統的酒造りのユネスコ無形文化遺産登録を祝う北岡篤県酒造組合会長(中央)ら=奈良市の平城宮跡資料館

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日本の「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。

日本酒や焼酎、泡盛と地域色豊かな酒を造る技術が世界に認められたのは喜ばしい。

酒は、祭事や婚礼といった日本の行事に不可欠で、酒造りが地域社会の結束に貢献しているとの評価だ。背景にある文化的価値への理解を深めるとともに、さらなる発展の契機にしたい。

日本酒は日本固有のこうじ菌の働きでコメの発酵を促し造られる。その独特の芳醇(ほうじゅん)な味わいはほかにはない特長だ。同じ醸造酒でも、ブドウの糖分を利用するワインなどとは異なるわが国独自の酒である。

発酵中のもろみを混ぜる蔵元の男性=兵庫県明石市

現代の酒造りの原型は室町時代にさかのぼる。地域の風土や環境に合わせて進化し、杜氏(とうじ)や蔵人らの技術が引き継がれてきた。各地から喜びの声が上がるのも、多くの地域で酒造りが行われてきた証しである。

一方で、現場の高齢化が進んでいる。その伝統を守りつつ、時代にあった変革も進めていかなくてはならない。

近年の市場は厳しい。農林水産省の調べでは、日本酒の国内出荷量は昭和48年をピークに減少し、昨年はその4分の1以下だった。多様な酒類との競合や健康志向による低アルコールブームなども要因だ。

ただし輸出は増加傾向にある。平成25年に無形文化遺産に登録された和食の人気に伴い日本酒の需要が高まっている。

業界のまとめによると、昨年度の輸出金額は10年前に比べて約4倍に増えた。海外ではすでに「SAKE」でも通じるが、登録による、さらなる認知度アップが期待される。

新酒づくりでタンクをかき混ぜる数馬酒造の社員=10月22日、石川県能登町(数馬酒造提供)

酒は郷土の歴史や文化を色濃く映す産物だ。地域色が強いということはそれだけ地場産業が多いことでもある。

東日本大震災や熊本地震、今年の能登半島地震でも多くの酒蔵が被害を受けた。クラウドファンディングなどを通じた支援も広がっている。今後も息の長い支援、応援を続けたい。

古来、酒は神事と深く関わり霊力を宿すとされている。神にささげた後に酒宴を開き、人々も口にすることで加護を得ると信じられてきた。技術の継承はもとより、心のよりどころとなってきた精神文化も受け継いでいくことが大切だ。

2024年12月8日付産経新聞【主張】を転載しています

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